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温暖化進行中なのに南極の氷が回復の「なぜ」–NASA観測衛星データで判明
2025.05.29 08:00
2021~2023年に南極の一部の氷が回復していることが米航空宇宙局(NASA)の衛星データから判明した。上海の同済大学の研究チームによる論文が科学誌「Science China Earth Sciences」に掲載された。
NASAの地球観測衛星「GRACE」(Gravity Recovery And Climate Experiment)とその後継である「GRACE FO(Follow-On)」からのデータを分析した結果、2002~2010年は年間平均約810億トンの継続的な氷の減少が認められた。2011~2020年は年間平均約1570億トンの減少だった。しかし、2021~2023年には、年間平均約1190億トンが増加している。
英ノーサンブリア大学の研究員であるTom Slater(トム・スレイター)氏は「これは特に珍しいことではない。温暖な気候では大気中により多くの水分が保持され、大雪などの極端な天候の可能性が高まり、氷の増加が南極で発生した」と米メディアLiveScience.comに解説している。
2023年の別の研究でも、2021〜2022年に前例のない南極の氷の増加が観測された。その研究でも今回と同様、異常な降水量の増加が主因とされている。今回の研究では、この傾向が2023年まで続いたと指摘している。
Slater氏は、この氷の増加が一時的な現象に過ぎないと強調している。「南極の氷の損失のほぼすべては、他の地域の氷河が加速し、温暖化した海に流れ込んだためだ。この現象は現在も続いており、今回の大雪は一時的な損失を相殺しただけで、長期的な変化ではない」
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Science China Earth Sciences
GRACE
GRACE FO
LiveScience.com