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ソフィアスペース、「軌道上データセンター」開発で5億円を調達
米Sophia Space(ソフィアスペース)は米国時間5月19日、「軌道上データセンター(Orbital Data Center:ODC)」開発を目的にプレシード資金として350万ドル(約5億円)を調達したと発表した。
米カリフォルニア州パサデナを拠点とするSophiaが開発するコンピューターモジュール「TILE」は太陽光電池パネルとシステムオンチップ(SOC)やAIチップを一体化させたものと言える。1m×1mの1m2で厚さ1cmのTILEはつなげられるようになっており、既存の宇宙機の太陽光電池パネルとして活用できる設計と説明する。
また、宇宙の放射線に耐えられる仕組みと熱管理技術を統合した設計で、地上のデータセンターのような冷却システムが不要になると説明する。
TILEはSOCとAIチップを搭載するが、Qualcomm製とNVIDIA製を選択できるとしている(Qualcommだと「SnapDragon 850」と「Cloud AI 100」、NVIDIAだと「Jetson」と「Blackwell」)。
地上では現在、生成AI(人工知能)やAIモデルを開発するための深層学習(ディープラーニング)などでデータセンターの電力が問題になりつつあるが、TILEでは太陽光という無制限の恩恵を受けられると説明する。
データセンターではまた、AIチップも含めたハードウェア全体の温度管理も問題になっており、どう冷却するかも課題となっている。TILEであれば、独自の熱負荷分散機構でクリアできると同社は説明する。データセンターは土地という制限もあるが、高度600~1000kmの太陽同期軌道(SSO)に展開するSophiaのODCは、そうした制限に悩まされないと解説している。
衛星に搭載されるカメラやセンサーの高性能化により、データ量も増加しているが、そのすべてを地上にダウンリンクして解析するのは効率が悪いと指摘されている。
Sophiaは、この点について、衛星に搭載されるコンピューターでデータを処理した方が効率がいいと解説(データの発生源に近いところでデータを処理するエッジコンピューティングと同じ考え)。同社はTILEのメリットを生かせる場面として、リアルタイム性が求められる災害の監視や対策、防衛などを挙げている。
「TILEのアーキテクチャはソリッドステートで自己完結型のコンピュートモジュールを特徴とし、宇宙空間の冷却技術と太陽光発電が統合されている」と同社は解説している。
同社の共同創業者であり、最高経営責任者(CEO)であるRob DeMillo(ロブ・デミロ)氏は「衛星運用会社から商用宇宙ステーションまで、我々の顧客はより迅速なデータ処理と配信を求めている。我々は軌道エッジコンピューティングを提供する。つまり、宇宙空間で、データの発生源に近い場所でワークロードを直接処理し、地球上で洞察を得るまでの時間が劇的に短縮する」と述べている。
Sophiaは米Axiom Space(アクシオムスペース)と提携し、ODCの有用性を実証する共同プロジェクトを進行中だ。この取り組みは、米現政権が構想するミサイル防衛システム「Golden Dome(ゴールデンドーム)」への応用も視野に入れている。
Axiomで宇宙データやセキュリティを担当するグローバルディレクターを務めるJason Aspiotis氏は、SophiaのTILEをベースにしたアプローチは「軌道ノードの分散ネットワークを介してメガワットの累積処理能力を提供できるほど拡張可能なODCの基礎を築く」と説明している。
