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米議会、NASA次期長官アイザックマン氏にマスク氏との関係を追及–利益相反について質問

2025.04.28 15:13

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 Trump政権が米航空宇宙局(NASA)の次期長官に指名したJared Isaacman(ジャレッド・アイザックマン)氏とElon Musk(イーロン・マスク)氏との関係を米上院議員が追及している。海外メディアのSpace.comが報じている

 2024年12月にNASAの次期長官に指名されたIsaacman氏は、決済処理会社米Shift4 Paymentsを創業した実業家であり、Space Exploration Technologies(SpaceX、スペースX)による宇宙飛行ミッションを率いた人物だ。Musk氏はSpaceXの創業者であり、現政権で政府効率化省(Department of Government Efficiency:DOGE)を担当している。

 米連邦議会上院の商業・科学・運輸委員会は米国時間4月9日に承認公聴会を開催。4月24日に承認公聴会の「記録のための質問」が公開された。

 民主党議員は「Donald Trump大統領がフロリダのマールアラーゴ(Trump氏の別荘)で次期NASA長官を指名した際、Musk氏がその場にいたか」を繰り返し質問した。Isaacman氏は直接的な回答を避け、「私の面接相手はアメリカ合衆国大統領だった。最終的にこの機会を提供したのは、大統領本人だった」と述べている。

 The Wall Street Journal(WSJ)の報道に触れ、Musk氏が2024年末にIsaacman氏に電話し、次期NASA長官への就任について話したとされる件についても、Isaacman氏は否定した(WSJの記事では、NASAが主導する月探査計画「Artemis」に使用されるロケット「Space Launch System」の廃止を次期予算案で提案すると書かれている)。

 別の民主党議員は、Isaacman氏とMusk氏、あるいはSpaceXとの関係が「利益相反やその疑いを生まないか」についても質問した。これに対してIsaacman氏は「倫理合意にもとづき、SpaceXとのすべての宇宙旅行サービス契約を終了し、将来のミッションのために支払ったすべての資金は返金された」と述べている。

 Isaacman氏が企画、資金を提供した計画「Polaris」の残り2回分の代金としてSpaceXに支払われた資金が、Isaacman氏に返金されることになる(世界初となった、Isaacman氏など民間人による船外活動が実施された「Polaris Dawn」はPolarisの第1弾)。

 Isaacman氏は、NASA長官に承認された場合、Shift4 Paymentsの役職を辞任することを明らかにしている。

 2025年10月から始まる米連邦政府の2026年度予算について、4月10日に米行政管理予算局(OMB)からNASAに送られた予算案の草案である「Passback」(パスバック)で科学プログラムについては約50%もの削減を提案している

 この件についてIsaacman氏は「私は公式の議論を精査したり、参加したりしたことはないが、NASAの科学予算を約50%削減することは最適な結果ではないようだ」と書いている。

 4月30日には同委員会がIsaacman氏の指名を上院本会議に送るかどうかを採決する予定。これは承認手続きの重要なステップとなる。

承認公聴会で上院議員からの質問に答えるIsaacman氏(出典:NASA / YouTube)
承認公聴会で上院議員からの質問に答えるIsaacman氏(出典:NASA / YouTube)

関連情報
「記録のための質問」(民主党)
「記録のための質問」(共和党)
WSJ
NASA長官承認公聴会(動画)
Space.com

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