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林業の作業現場の通信環境改善に「スターリンク」–NTT Comなどが実証実験

2025.02.21 16:00

UchuBizスタッフ

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 大垣共立銀行(OKB、岐阜県大垣市)などは、衛星ブロードバンドサービス「Starlink」などを活用して林業の現場での通信環境の改善を目的にした実証実験を実施した。NTTコミュニケーションズ(NTT Com)が2月21日に発表した。

 岐阜県は豊かな森林資源に恵まれており、森林率は全国2位の約81%という。なかでも揖斐川町は約9割が森林であり、林業が盛んな地域となっている。

 だが、林業の作業現場は、山間部など携帯電話が届かない電波不感地帯であることが多く、ケガや遭難などの事故発生時に連絡する手段がないため、早期発見や対処が難しい危険な環境とされている。機材故障などのトラブル発生時でも通信可能な場所に移動するなど業務の非効率性も課題という。

 こうした課題の解決に向けて電波不感地帯となっている作業現場のネットワーク化と外部と連絡が可能なコミュニケーションツールを導入して、就業環境改善を検証した。

実証実験イメージ(出典:NTT Com)
実証実験イメージ(出典:NTT Com)

 実証実験は2024年11月18日~12月20日に同町で揖斐郡森林組合が協力して林業の作業現場で実施。Starlinkのほかに携帯電話、「Wi-Fi HaLow」を活用してネットワークエリアを構築した(Wi-Fi HaLowは920MHz帯を利用したWi-Fi規格)。

 NTTなどが提唱する、光通信をベースにした「IOWN」構成の構成要素である「Cradio」を活用して、地形データや周囲の無線電波状況をもとに最適なネットワーク端末の配置場所を自動で導出することで、効率的にネットワークを設計、構築したという。

Starlinkのアンテナを設置(出典:NTT Com)
Starlinkのアンテナを設置(出典:NTT Com)

 コミュニケーションツールとしてトランシーバーアプリ「BONX WORK」を使って、音声通話に加えて写真共有を含むテキストチャットで現場と事務所のコミュニケーションを円滑化したとしている。

 実証実験後のアンケート調査では、回答者の大半が「安全性や安心感が向上した」と回答するなど、就業環境改善の効果を確認したと説明する。今回の実証実験の成果をもとに実装要件の精査を進め、電波不感地帯で作業する頻度の高い林業、その他の産業での安全性や生産性の向上に貢献するシステムの実装を目指すとしている。

 今回の実証実験は総務省が公募した「令和6年度 地域デジタル基盤活用推進事業」として進められた。OKBやNTT ComのほかにGOCCO.、岐阜大学、よだか総合研究所、揖斐郡森林組合、揖斐川町、岐阜県立森林文化アカデミーが参加した。

Cradioのイメージ(出典:NTT Com)
Cradioのイメージ(出典:NTT Com)

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NTT Comプレスリリース

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