自律型ドローンで夜間の人物捜索に成功--「スターリンク」で映像をリアルタイムに確認

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自律型ドローンで夜間の人物捜索に成功–「スターリンク」で映像をリアルタイムに確認

2024.12.05 08:30

UchuBizスタッフ

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 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は12月4日、自律飛行型ドローン「Skydio X10」を活用した夜間での人物捜索の実証実験に成功したことを発表した。実証実験は福島県昭和村で実施した。

 Skydio X10の機能である夜間自律飛行とサーマルカメラによる温度検知で夜間の人物捜索に活用できることを検証した。衛星ブロードバンドサービス「Starlink Business」を活用して、携帯電話の電波強度が不十分だったり光回線の整備が整っていなかったりする“不感地帯”でも遠隔操作で映像を伝送できることでリアルタイムに安全に状況を把握できたという。

実証実験の全体像(出典:NTT Com)
実証実験の全体像(出典:NTT Com)

 Skydio X10は夜間の自律飛行に対応しており、日没後であっても安全に人物捜索を継続できることを確認。従来のドローンでは困難であった場所にも進入し、安全に状況を確認できることも確認した。

 サーマルカメラで対象物の温度などを検知して、夜間の視界が悪い環境や樹木などの障害物がある環境でも効率的に人物を確認でき、人命救助で迅速に対応できることも把握した。

リアルタイムに伝送された映像。左がサーマルカメラ、右が可視光カメラ(出典:NTT Com)
リアルタイムに伝送された映像。左がサーマルカメラ、右が可視光カメラ(出典:NTT Com)

 スポットライトを活用して上空90m付近からでも地上の人物を確認、サーマルカメラでとらえられない対象物も認識できたという。Skydio X10でスポットライト活用した夜間実証は日本初という。

 Starlink Businessを使うことで電波不感地帯からでも映像伝送が可能となり、遠隔地からリアルタイムで映像を受信し現場の状況を把握できるようになっている。

 Skydio X10が飛行中に捜索対象者の緯度経度情報を記録し、その情報をもとに職員が遭難者を捜索することでおよそ15万m2(東京ドーム3個分)の森林にいる捜索対象者3人のもとに約40分程度で到達したという。

昼間に飛行するSkydio X10(出典:NTT Com)
昼間に飛行するSkydio X10(出典:NTT Com)

 今回の実証では、自動飛行と手動飛行を組み合わせて捜索と緯度経度情報を記録し、その情報をもとに約21分で1人めの捜索対象者のもとに職員が到達できたとしている。Skydio X10がリアルタイムに認識した緯度経度情報と現地での緯度経度座標のズレは数メートル程度であり、効率的に捜索できたとしている。

 災害時などの人命救助では「72時間の壁」と言われるように一般的に被災後3日を過ぎると生存率が著しく低下するため、初動で迅速に救助者を発見、救助することが非常に重要とされている。

 山岳遭難では、装備が不十分なまま入山しているケースが多く、夜間は気温が低下し生存率が低下するリスクが高まる。捜索依頼が夕暮れ間際となった場合、人による捜索は二次遭難のリスクが高まるため、夜間には捜索できないこともあり得る。

 今回の実証実験は、ドローンを活用して、夜間と昼間により安全で迅速な捜索活動の効果を検証した。

夜間に飛行するSkydio X10(出典:NTT Com)
夜間に飛行するSkydio X10(出典:NTT Com)

 米国ではドローンによる人物捜索は「Drone as First Responder(DFR)」と呼ばれ、活用が広がっていると説明。DFRは、緊急事態発生時にドローンを迅速に展開し、速やかに状況を把握する仕組み。対応時間の短縮、現場の安全性向上、リソースの最適配分が可能になると考えられている。

 今回の実証実験はSkydio X10を活用した初めてのDFRユースケースという。NTT Comは、日本で初めて、Skydioが認定する「DFR Program Manger」が在籍しており、自治体などの法人がドローンを活用したDFRプログラムの構築を支援するとしている。

実証実験の様子(出典:NTT Com / YouTube)

関連情報
NTT Comプレスリリース

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