ニュース

キューブサットとして世界最高レベルの分解能撮像に成功–アークエッジ・スペースなど

2025.02.10 08:00

UchuBizスタッフ

facebook X(旧Twitter) line

 アークエッジ・スペース(東京都江東区)は2月7日、台湾の宇宙機関などと共同で開発した地球観測衛星「ONGLAISAT」(オンライサット)がキューブサットとしては世界最高レベルという地上分解能(2.5~3.0m)の撮像に成功したと発表した。

 大きさが6U級のONGLAISAT(ONboard Globe-Looking And Imaging Satellite)は、台湾の宇宙機関である台湾宇宙センター(TAiwan Space Agency:TASA)や東京大学 大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 中須賀・船瀬・五十里研究室と共同で開発した

 TASAの実証事業(6U Fast Validation Cubesat)の一環として、TASAが開発した光学観測装置を軌道上で実証するために同社と東京大学が共同で開発した高精度な姿勢制御技術を含む衛星バスを活用した。

 同社が保有する牧之原地上局(静岡県牧之原市)との試験電波で2024年12月10日に通信確立後、約2カ月間軌道上実証を進め、同衛星が搭載する地球観測用光学システムすべてのミッション目標を達成したという。

ONGLAISATで撮像された画像。試験電波で取得(出典:アークエッジ・スペース)
ONGLAISATで撮像された画像。試験電波で取得(出典:アークエッジ・スペース)

 ONGLAISATは、TASAにとって初という「Korsch off-axis」タイプの光学システムをペイロードの設計に採用した。このシステムの設計や製造、組み立てには高い技術が必要とされるが、サイズを縮小しながら光学性能を向上させることに成功したと説明する。

 ミッションでは、台湾の国家実験研究院(National Applied Research Laboratories:NARLabs)傘下の台湾半導体研究所(Taiwan Semiconductor Research Institute:TSRI)が開発した「時間遅延積分(Time Delay Integration:TDI)」技術を応用したセンサーである「CMOS TDI」の軌道上実証に成功した。TDIは、衛星が移動する速さにあわせて、カメラのセンサー上で光の明るさを積み重ねることで、より明るくクリアな画像を作れるという。

 従来は、衛星で画像を取得した後で通信帯域の制約などから画像を地上に送信するまでに長い時間がかかっていたと説明。今回は、衛星内で画像を圧縮するオンボード画像技術で迅速に地上に送信し、解析、利用できたという。

 TDI撮像中は、センサーの画素レベルで像がブレないように高精度な姿勢制御技術が求められるほか、光学系システムの精度を保証するために温度を精密に制御することも求められ、これらを実証することにも成功したと説明する。

 今回の実証の成果である、地球観測衛星にとって重要な世界最高水準の地上分解能、TDI技術での画像の高鮮明化、オンボード処理でのデータ圧縮技術、これらを実現するための高度な衛星バス技術は、6U級キューブサットだけでなく、より大型の衛星にも展開可能としている。

ONGLAISATのミッションロゴ(出典:アークエッジ・スペース)
ONGLAISATのミッションロゴ(出典:アークエッジ・スペース)

関連情報
アークエッジ・スペースプレスリリース(PR TIMES)

Related Articles