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宇宙ロボットのGITAI、6割内製した衛星の実証に成功–中ノ瀬CEO「製造ラインを拡大」

2025.01.28 14:24

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 宇宙向けロボットを開発するGITAIは米国時間1月27日、初の自社開発衛星の実証実験に成功したと発表した。

 GITAIの衛星は2024年12月21日、Space Exploration Technologies(SpaceX、スペースX)の中傾斜軌道に小型衛星を打ち上げるライドシェア(相乗り)ミッション「Bandwagon-2」で地球低軌道(LEO)に打ち上げられた。

 宇宙でのコストを100分の1にするという目標を掲げるGITAIは、包括的な軌道上サービスを可能にするため、2024年1月から主要コンポーネントを含む衛星技術の自社開発に重点を置いている。

 その成果として、今回打ち上げられたのが衛星「SC1」。キューブサットである本体サイズは16Uで重量は20kg。実証実験では、画像や動画のデータの取得、送信に成功。事前に決めておいた3つの成功基準をすべて満たした「フルサクセス」を達成させた。

60%を内製したというSC1(出典:GITAI)
60%を内製したというSC1(出典:GITAI)

 SC1(Space demonstratioin Cubesat 1)の一部は外部から調達されたが、推進システムやリアクションホイール、スタートラッカーなど高コストでリードタイムの長いコンポーネントを自社で開発。海外メディアのSpaceNewsによると、衛星の約60%は内製したという。

 GITAIの創業者で最高経営責任者(CEO)である中ノ瀬翔氏は「自社開発をうたう新興企業を含め、衛星を開発する企業の多くは、部品のほとんどを外部から調達している」と説明している。

 「衛星コンステレーションの大量発注のため、(電気推進など)一部の衛星部品が不足しており、迅速な納入をうたっている衛星バス部品の新興企業でさえ、実際にはリードタイムが数年に延びている」(中ノ瀬氏)

 GITAIは、電気推進や化学推進など衛星に必要なすべてのコンポーネントの自社開発を2025年内に完了させる予定。中ノ瀬氏によると、ほとんどの部品を自社開発することは、実証された20kgの衛星バスを6カ月のリードタイムで100万ドルで製造、販売できることを意味すると解説している。センサーやカメラなどミッション機器を自社で開発する予定はない。

SC1の製造風景(出典:GITAI)
SC1の製造風景(出典:GITAI)

 今回の実証成功で「軌道上サービス用ロボット衛星の開発能力」「衛星バスを開発、販売する能力」「宇宙機のプライムコントラクターとしての能力」を獲得できたとGITAIは説明している。

 中ノ瀬氏は、「衛星コンステレーションへの需要増加に対応するため、50kgと200kgの衛星プラットフォームを加え、製品ラインを拡大している」と述べている。

 この新たな製品ラインは、ロボットアームを搭載した500kg級宇宙機への足掛かりとなるものだ。同社は2026年、以前は2025年を予定していた軌道上でのランデブーとドッキングを実証する計画だ。

 同社は、宇宙環境での作業を安全かつ安価に実行できる汎用作業ロボットを開発している。これまでに、シャクトリムシ型アームロボット「GITAI Inchworm One(IN1)」、10m級自律ロボットアーム「GITAI S10」、2m級自律ロボットアーム「GITAI S2」、月面作業用ロボットローバー「R1」を開発している。2023年5月に三菱UFJキャピタルなどが40億円を出資している

SC1動画(出典:GITAI / YouTube)

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GITAIプレスリリース
SC1動画
SpaceNews

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