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「だいち4号」から地上へのデータ伝送、世界最速とギネス世界記録に認定
2025.01.23 16:17
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用する、合成開口レーダー(SAR)による先進レーダー衛星「だいち4号」(ALOS-4)は2024年7月に衛星-地上間のデータ転送で通信速度3.6Gbpsを記録。この記録が「最速の地球観測衛星から地上局への直接伝送」としてギネス世界記録に2024年12月19日に認定された。JAXAの第一宇宙技術部門とだいち4号を開発した三菱電機が2025年1月23日に発表した。
今回、ギネス世界記録を達成した3.6Gbpsの直接伝送は、家庭の一般的なインターネット回線の伝送速度(1Gbps以下)の4倍以上の速さになる。衛星から最大2000km以上離れた地上局に向けてデータを伝送する。
だいち4号は約90分の周期で地球を周回するが、1つの地上局と通信できる時間は10分程度であり、この間に観測データを伝送する必要がある。だいち4号は、現在運用中の陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2)と比較して4倍の観測幅を持つため、非常に多くのデータ量を伝送する必要もある。
これらの運用要求に対応するため、短時間に大容量のデータを伝送する直接伝送系が開発された。だいち4号の直接伝送系は、広域な観測データを迅速に地上局へ伝送することで、地殻や地盤の変動などを迅速に把握できるようになり、防災・減災に寄与すると期待されている。
なぜ高速通信が必要なのか
「bps」は1秒間で1bitのデータを送れる速度。8bitで1Byteであり、3.6Gbpsという通信速度は、1秒間で450MB(Mega Byte)、1分間で27GB(Giga Byte)のデータを送れる速さになる。スマートフォンで考えると、50GBのプランを契約していても2分も使えないことになるとJAXA第一宇宙技術部門は説明する。
だいち4号は観測したデータを一旦、衛星内にある半導体メモリーに記録し、地上局に送信できるタイミングで送っている。だが、データ伝送速度が遅ければ、10分間で多くのデータを送ることはできない。
だいち2号の通信速度は0.8Gbpsであり、10分間で60GBのデータを送信できるが、そのままの速度では観測幅が増えても観測できる距離が減ることになる。だいち4号では、通信速度をだいち2号の4.5倍である3.6Gbpsという高速通信できるよう設計され、10分間で270GBのデータ伝送が可能。
だいち2号では、3m分解能で観測できる観測幅は50kmだったが、だいち4号では、3m分解能で観測できる観測幅は4倍の200km。加えて、だいち4号では、HH偏波(水平偏波送信・水平偏波受信)とHV偏波(水平偏波送信・垂直偏波受信)と呼ばれる2種類の観測方法で2偏波で観測することが常時可能となっている。2偏波観測で得られたデータは合成することで、疑似的なカラー画像を作り出せるようになり、より地表の状況の判別が簡単になり、災害状況の把握や森林伐採の監視などに活用されることが期待されている。
だいち4号」は筑波宇宙センター(茨城)、地球観測センター(埼玉)とスウェーデン宇宙公社(Swedish Space Corporation:SSC)のエスレンジ局(スウェーデン)、イヌビック局(カナダ)の地上局が使われている。
筑波宇宙センターと地球観測センターでは、1日に3~4回、2つの地上局で同じデータを受け取っている。エスレンジ局とイヌビック局では緯度が高いため、だいち4号が地球を1周する間に1回通信している。
観測データは順次地上局へ送られているが、それでも、観測するデータが膨大な量であるため、観測する地域によって分解能を10mにするなど、データ容量を抑えて対応している。