NASA、月周回衛星ミッションを延長--月への中継基地「ゲートウェイ」軌道の安定性を調査

ニュース

NASA、月周回衛星ミッションを延長–月への中継基地「ゲートウェイ」軌道の安定性を調査

2024.10.15 18:15

塚本直樹田中好伸(編集部)

facebook X(旧Twitter) line

 米航空宇宙局(NASA)の月を周回する衛星「CAPSTONE」のミッションが2025年12月まで延長された。CAPSTONEを開発、運用する米Advanced Spaceが米国時間10月6日に発表した。

 小型衛星のCAPSTONE(Cislunar Autonomous Positioning System Technology Operations and Navigation Experiment:月軌道自律測位システム技術運用・航法実験)の大きさは電子レンジほどであり(12Uのキューブサット)、重さは約25kg。宇宙開発ベンチャーのRocket Lab(ロケットラボ)の「Electron」ロケットで2022年6月に打ち上げられた

 CAPSTONEは「月長楕円極軌道(NRHO)」を周回している。NRHOは、最も近いところ(近月点)で高度約4000km、最も遠いところ(遠月点)で高度約7万5000kmで月の北極と南極を周回する軌道。

 NRHOは、軌道面が常に地球を向いていることで地球との通信を常時確保可能。地球からのNRHOへの到達エネルギーは月の低軌道までの70%程度と輸送コストが比較的小さいと考えられている。月の南極が見えている時間が長いことから、月の南極探査の通信中継としてもNRHOは都合がいい軌道とされている。

 月探査計画「Artemis」での中継基地とも言える月周回有人拠点「Gateway」が周回する予定のNRHOの安定性を試験、確認することがCAPSTONEの目的。これまでに670日以上運用されており、NRHOで月を100回飛行している。

 自律測位システム「Cislunar Autonomous Positioning System(CAPS)」が搭載されており、すでに月周回衛星「Lunar Reconnaissance Orbiter(LRO)」と相対的な位置関係を地上局に頼らずに測定することに成功している

 今回、NASAから資金が提供され、プロジェクトは2025年12月まで延長される。自律測位システムや人工知能ソフトウェアのさらなる実験が可能になる。

 「CAPSTONEは5年間で、中小企業の素晴らしいアイディアから予定終了日をはるかに超えて継続するミッションへと成長した」とAdvanced Spaceのプレジデントで最高経営責任者(CEO)であるBradley Cheetham氏は述べている。

 衛星のプラットフォーム部分は米Terran Orbital、推進システムは米Stellar Explorationが担当。プロジェクトはNASAのエイムズ研究センターにある、NASAの小型宇宙機技術プログラム(宇宙技術ミッション本部=STMD内)が管理している。打ち上げ資金とミッションの運用支援はNASAの探査システム開発ミッション本部(ESDMD)が担当。CAPSの開発はNASAの「SBIR」プログラムが支援している。

(出典:NASA/Daniel Rutter)
(出典:NASA/Daniel Rutter)

関連情報
Advanced Spaceプレスリリース
CAPSTONE概要
Space.com

Related Articles