中国、「量子暗号通信」衛星を2025年にも--中国電信ユーザーは300万人

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中国、「量子暗号通信」衛星を2025年にも–中国電信ユーザーは300万人

2024.10.09 17:00

塚本直樹

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 中国が「量子暗号通信」衛星を2025年にも地球低軌道(LEO)に打ち上げる予定だと中国メディアの第一財経が報じている

 中国は2016年8月に、量子通信と暗号化に重点をおいた量子科学実験衛星(Quantum Experiments at Space Scale:QUESS)「墨子」を打ち上げた。2022年には、政府の研究機関である中国科学院(CAS)は、量子鍵配送(Quantum Key Distribution:QKD)をテストする小型衛星「済南1号」を打ち上げている。

 CASの量子情報・量子科学技術イノベーション研究所 所長の潘建偉(Pan Jianwei)氏によれば、2025年には2〜3機の量子暗号通信衛星が打ち上げられるという。2027年にはさらに1機が地球中軌道(MEO)に打ち上げられ、今後5〜6年で量子暗号通信ネットワークが実現できるとの見通しを示した。

 報道によれば、中国の新しい量子暗号通信は地上ネットワークと統合され、より広範囲、最終的には地球規模のカバー範囲を実現する。潘氏は「中国は量子暗号通信分野での国際協力に非常に前向きで、さらなる国際交流を行う用意がある」と述べている。

 潘氏は「中国での量子暗号通信の利用者は急増している」と説明。中国最大の通信会社である中国電信(チャイナテレコム)は、2023年末時点ですでに300万人の量子暗号通信のエンドユーザーを抱えており、その数は2024年中にも500万人を超えると予想されている。

 現在のインターネットでは、SSL暗号方式が広く使われており、鍵を生成するのに「RSA」というアルゴリズムが活用されている。これまでの一般的なコンピューターでは、RSA暗号を解読するには天文学的な時間がかかると言われている。

 今後、量子コンピューターが実用されれば、RSA暗号が解読され、オンライン取引などの通信の安全性が損なわれるリスクが指摘されるようになっている。そうした対策として進められているのが量子暗号だ。物質の量子論的性質に基づき暗号鍵を生成することで、絶対に計算不可能な暗号を作り出し、通信の安全性を保証する技術だ。

 量子暗号通信は、日本でも情報通信研究機構(NICT)や東京大学 大学院 工学研究科、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)、次世代宇宙システム技術研究組合(NeSTRA)、スカパーJSATが取り組んでいる。総務省が東芝やNECなどを対象候補にして、実用化支援を2025年にも始めると報道されている。

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