ニュース
損保ジャパンなど、豪企業との協業を検討–衛星の通信喪失リスクにビーコンで対応
2024.07.17 14:00
損害保険ジャパンとSOMPOリスクマネジメントは、オーストラリアのANT61と協業可能性を検討するための合意書を締結した。衛星事業者によって打ち上げられる衛星の通信喪失リスクに備える包括的ソリューションを提供する。損保ジャパンが7月16日に発表した。
3社が連携して、衛星事業者の衛星打ち上げミッションの成功確率を高めるサービスを提供する考え。ANT61は、地球低軌道(LEO)衛星専用の情報伝達デバイスであるビーコンを開発している。
ビーコンは通信機器やソフトウェア、センサーを搭載。軌道に投入された小型衛星の状態を示す、姿勢や温度、生成電力などのデータを衛星本体の備える通信機器とは独立してビーコン経由で地上に送信することができる。衛星側の仕様次第では、ビーコンを経由して地上から衛星に搭載されたソフトウェアを書き換えることも可能。ビーコンには電池が内蔵されていることから、衛星本体が故障した場合でも1週間程度はビーコン単体で地上と通信できるという。
衛星事業者はビーコンから得られた情報を通じて、故障発生前後の衛星の状態を従来以上に正確に把握できるようになると説明。衛星事業者は故障した小型衛星を復旧させるための手段をより適切に検討したり、打ち上げを控えている後続機に対してどのように改善すべきなのかを検討したりできるとしている。
地上でのビーコン開発は2024年2月に完了しており、今後は軌道上での動作実証が予定されている。
ANT61は、2012年に設立されたオーストラリアのシドニーを拠点とする宇宙スタートアップ企業。これまでは大型衛星を軌道上で保守するためのロボット技術の開発に取り組んでおり、現在はビーコンの提供準備に取り組んでいるという。
損保ジャパンとSOMPOリスクは、宇宙テクノロジーを開発する事業者や宇宙ビジネスに参入しようとする企業を対象に宇宙ビジネス支援サービスを2023年11月から提供している。
損保ジャパンとSOMPOリスクの知見とANT61のビーコンに関する技術を組み合わせて日本の衛星事業者が地上との通信喪失リスクに備えられるソリューションの提供を通じて、日本の宇宙産業の発展に取り組むと説明。3社の専門知識と技術力を組み合わせることで、今後の衛星運用の信頼性向上やリスク管理など、さまざまな効果を発揮できるよう協業の可能性を検討していくという。
世界的に宇宙ビジネスの主流となっているとする小型衛星は、宇宙空間に投入された初期段階で地上との通信を喪失する事例が頻繁に発生しているという。遠い宇宙空間に存在するため、衛星に搭載された通信機器から地上に送信される各種データが唯一、衛星の状態を把握する根拠になる。
地上と衛星の通信が途絶えてしまうと、衛星に何が起きているのか分からず、衛星事業者が取り得る手段は限られる。故障原因が特定されないために後続機の開発では効果的に対策するための適切なフィードバックを得られないという課題もあると指摘している。