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過酷な環境でプレッシャーと闘う宇宙飛行士に学ぶ、宇宙流メンタルヘルスケアとは

2024.05.23 15:09

天地人

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 宇宙ビッグデータを活用した無料GISプラットフォーム「天地人コンパス」を手掛ける天地人本連載では、同社でインターンとして働く学生が、「学生視点」で宇宙ビジネスの注目点を解説します。本記事では、「宇宙飛行士のメンタルヘルスケア」に焦点を当てていきます。

過酷な宇宙空間

 さらに、宇宙飛行士はこのような過酷な環境で、数十億円単位のプロジェクトや、失敗が許されない任務を果たさなければなりません。ストレスが溜まりそうな環境で生活をしていることもあり、過去にはストレスが原因で、宇宙飛行士同士の口論や不和が起きたり、地上の管制官との意見の対立が生じ、通信が一時的に途絶える事態なども発生しました。

 宇宙飛行士のメンタルヘルスケアは、彼らの生命を守るために欠かせない要素と言われています。

地球でもできる。宇宙飛行士が実践しているメンタルヘルスケア

 宇宙飛行士は、宇宙でどんなストレス状態が発現するかを想定してつくられた訓練・対策を行っています。本記事では、宇宙飛行士が実践しているメンタルヘルスケアのうち、地球でも実践可能なものをピックアップして紹介します。

1. 運動

 宇宙飛行士は、微小重力で体や心の健康を保つため、毎日2時間の運動を実践しています。この運動習慣は、宇宙の特殊な環境でのストレスを軽減するためのものです。これは地球上でも同様で、運動はメンタルヘルスケアに役立つとされています。多くの研究で、運動がうつ病のリスクを低減することが示されています。例えば、東京医科大学の研究によれば、1日に3.5〜4時間体を動かすと、精神的な健康の維持に役立つと示されています。

国際宇宙ステーション(ISS)でサイクリングを楽しむ元カナダ人宇宙飛行士ロバート・サースク氏 (出典:NASA)

2. 生体リズム(≒体内時計)を保つ

 米航空宇宙局(NASA)の研究で、宇宙飛行士の生体リズム(体内時計)の変化が睡眠不足の原因となり、睡眠促進薬の使用が増加することが明らかになりました。

 ISSでは、90分で地球を1周するため、1日に16回日の出が起こります。この特殊環境で、生体リズムが崩れると、宇宙飛行士の体調や精神に悪影響が出る可能性があります。ISSでは、24時間の昼夜サイクルを再現する照明システムを採用し、15時間半は明るく、残りの8時間半は暗くして、宇宙飛行士の生活リズムをサポートしています。

宇宙飛行士の作業時間中のISS内部の照明(出典:NASA)
宇宙飛行士の睡眠時間中のISS内部の照明(出典:NASA)

 生体リズムを保つためには、朝の光、夜に分泌されるメラトニン(※1)、そして適切な食事(なかでも朝食)が大事です。特に「光」は、人間の生体リズムを維持するために非常に大切です。多くの研究で、日光は人間の肉体と精神の健康をサポートする役割を果たしていると示されています。

 地球で生活しても、人間は日光不足で「冬季うつ病」になることがあります。気分の落ち込みを特徴とするこの病気は、日照時間の短い冬場に最も多く見られます。実際、極夜(太陽が一日中出てこない日)の北欧の国、例えばノルウェーやフィンランドでは、極夜の期間は十分なビタミンDが摂れないと言われており、食事やサプリメントによる補給が文化として根付いています。

 ※1 メラトニンとは、脳の中にある「松果体」という部分から分泌される、睡眠に関わるホルモンです。起床して朝の光を浴びた約15時間後(就寝予定時間の約1〜2時間前)から血中のメラトニン量が増加し、眠気を誘う働きをしていると報告されています。(出典:サントリーウエルネスオンライン)

出典:JAXA宇宙医学パンフレットNo.3

3. 日記を書く

 NASAの調査によると、日記を書くことで感情の表現がしやすくなり、ストレスやうつ、不安の対処に寄与するとされています。宇宙でも地球でも、日記は、感情の整理や自分の長所の再確認に非常に有効です。特に、不安や悩みを言葉にすると、問題の原因を明確にし、解決策を考えやすくなります。

最後に

 今回はメンタルヘルスに関心のある私が、宇宙飛行士が実践しているメンタルヘルスケアの一部を紹介しました。宇宙の過酷な環境で体験するストレスと地球で直面するストレスは異なるかもしれませんが、その対処法の本質は同じです。本記事を通して、皆様の健康の一助になれば幸いです。

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