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防衛省、「多軌道観測」衛星でキヤノン電子と契約–「宇宙領域把握」能力を向上
防衛省は、宇宙領域把握(Space Domain Awareness:SDA)能力の向上に向けた実証事業「多軌道観測実証衛星の製造・試験」について、キヤノン電子と3月29日に契約した。4月9日に発表した。
宇宙空間を安定的に利用するためには、SDA能力の向上が不可欠だという。特に、高度3万6000kmの静止軌道(GEO)上では、通信衛星などの重要な衛星が運用されている。
これらの衛星の安定的な利用を確保するため、地上の光学望遠鏡やレーダー、軌道上の観測衛星など、複数の観測方法を組み合わせ、不審な衛星の動きを検知する精度を高めることが重要だという。
そこで、同事業では、高度2000km以下の低軌道(LEO)や高度2000~3万6000kmの中軌道(MEO)、GEOといった各軌道を周回する衛星を観測する光学衛星をLEOに打ち上げ、軌道上で衛星の動きを検知する実証を行うとしている。
運用中の衛星や運用が終了した衛星(スペースデブリ)などの位置や軌道などを把握するのが「宇宙状況把握(Space Situational Awareness:SSA)」。SSAに加え、衛星の運用や利用の状況、衛星の意図や能力を把握するのがSDA。
防衛省は、宇宙領域専門部隊を強化するため、航空自衛隊府中基地に「宇宙作戦隊」を2020年5月に新編。2022年3月に宇宙領域専門部隊の体制を強化するために「宇宙作戦群」を70人規模で新編した。
2023年3月には、第2宇宙作戦隊と宇宙システム管理隊を新編するとともに120人規模に増員。2023年度末に第1宇宙システム隊と第2宇宙システム隊を新編して200人規模に増員している。2024年年度末には宇宙作戦群を320人規模に増員する予定。
防衛省は、2022年12月16日に国家安全保障会議で決定、閣議で決定した国家安全保障戦略などの戦略文書、2023年6月13日に宇宙開発戦略本部で決定した宇宙安全保障構想に基づき、民間事業者などと連携。宇宙での安全保障に取り組んでいる。