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能登半島地震、2020年12月からの群発地震が誘因か–衛星測位データを分析
2024.03.25 16:41
1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」(マグニチュード7.6)で最も変化が見られたのが能登半島の北部であり、水平移動で西向きに2m動いていて、垂直移動では1.9mの隆起を示す地殻変動があった。衛星測位システム(GNSS)のデータから明らかになった。
2020年12月頃に始まった能登半島北東部の地殻変動や群発地震は、地下深部からの流体の上昇、誘発された非地震性すべりが原因であり、これが応力の蓄積されていた能登半島北岸の活断層すべりを促進したことで、今回の能登半島地震が発生したと考えられている。
水平移動や上下変動の変位量から、原因となる断層すべり分布を推定したところ、暫定的な解析結果としながらも、能登半島の東西に位置する箇所に2つの大きなすべりの領域が存在していたことが今回明らかになったと説明する。
令和6年能登半島地震後に、地殻変動は減速しながらも継続していると解説。地殻変動の空間分布は、発生時と発生後で似ている一方で、能登半島北部の全域が地震後1カ月で最大5cm沈降しているなどの異なる特徴もあるとしている。
米Global Positioning System(GPS)などに代表されるGNSSは、軌道を周回する衛星から送信される電波を利用して、受信点の位置を正確に把握する。日本政府は国産の準天頂衛星(QZSS)「みちびき」の利用を促進している。地面に固定された受信点であれば、時間の間隔を置いて計測することで、その間に生じた地殻変動を3次元的に把握できるという。
一般的なGNSSでは、測位誤差が5~10m程度とされている。ソフトバンクのGNSS観測網はネットワークを介して補正情報を配信。GNSS受信機が受信した信号を活用して高精度測位技術「Real Time Kinematic(RTK)」でセンチメートルの誤差でリアルタイムに測位できるという。
ソフトバンクは基地局の設置場所を活用することでRTK測位に必要となる独自基準点を全国3300カ所以上に設置。この高密度なGNSS観測網(ソフトバンク独自基準点)を活用して、能登半島エリアのデータを解析することで、今回の地震による水平移動や上下変動の地震時変位量と、断層面上でのすべり分布などを推定した。2020年から継続している能登半島での地震活動に伴う隆起などの地殻変動についても詳細な分布も解析した。
これらの成果は、政府の地震調査委員会などに報告され、令和6年能登半島地震の発生後と発生前から継続している地震活動の評価などにも活用されているという。
こうした地震の評価には従来、国土地理院の「GEONET」、大学などの研究機関が設置するGNSS観測点が主に活用されていた。そうした観測点に加えて、ソフトバンク独自基準点で取得したデータも活用することで地殻変動を具体的にデータで示して、より詳細に地震の姿を得られるようになったことは、ソフトバンク独自基準点のデータが持つ空間的な稠密性の有用性を示すものと説明する。
ソフトバンクと同社子会社で位置補正情報を生成、配信する事業を手掛けているALES、東北大学 大学院理学研究科、京都大学 防災研究所などがソフトバンク独自基準点の宇宙地球科学用途利活用コンソーシアムを結成している。
コンソーシアムでソフトバンクとALESが、能登半島エリアのソフトバンク独自基準のうち約30カ所の観測データをALESが(後処理用のファイル形式である)RINEX形式に変換し、地震発生前後を含めた日ごとの30秒間隔のデータをコンソーシアムに提供している。
東北大学 大学院理学研究科はコンソーシアムの代表機関として主にGNSSを活用した統合解析による断層すべり分布を解析している。京都大学 防災研究所がコンソーシアムの地震グループの幹事機関として、主にGNSSを活用した統合解析で地震時変位量を解析、断層モデルを推定している。
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