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NASA探査機の衝突実験、小惑星は「異なる天体」に 研究チーム
2024.03.01 10:30
米航空宇宙局(NASA)の探査機を小惑星ディモルフォスに意図的に衝突させた2022年9月の「二重小惑星進路変更実験(DART)」を巡り、実験の衝撃で小惑星が「全体的に変形」した可能性があるとの新たな研究結果が発表された。
DARTミッションの目標は、惑星防衛のために小惑星の進路を変更させる実験をフルスケールで実施すること。宇宙船を秒速6.1キロで小惑星に衝突させる「キネティック・インパクト(運動衝突)」だけで宇宙空間の天体の動きを変更できるのかどうか確認する狙いがあった。
ディモルフォスは小型の衛星で、ディディモスと呼ばれるより大型の親小惑星の周りを周回している。どちらも地球に脅威を及ぼす星ではないが、ディモルフォスは地球の脅威となりうる小惑星と似たサイズであることから、この二重小惑星は進路変更技術の実験に最適だった。
衝突の当日以降、天文学者は地上望遠鏡のデータを用い、DART探査機が本当にディモルフォスの公転周期(ディディモスの回りを1周するのにかかる時間)を32~33分ほど変更させたのかどうか確認を試みてきた。
DARTのミッションは衝突とともに終了したが、探査機は衝突前、岩で覆われたディモルフォスの表面を捉えた詳細な画像を送信した。研究者らはこれを手掛かりに、ディモルフォスの形成過程について知見を深めている。
研究チームはまた、地上望遠鏡や宇宙望遠鏡を利用した追加観測も実施。イタリアの人工衛星「LICIACube」が5分20秒にわたって衝突後の様子を撮影した。
この観測の結果、衝突の衝撃で巨大なデブリの煙が宇宙に放出される様子も明らかになった。
研究チームは現在、全データをソフトウェアに入力して、残る主要な疑問の解明に取り組んでいる。小惑星が衝突に対してどのように反応したのか、どういったクレーターが残されたのかなどが焦点となる。
今回の結果からは、DARTの衝突でディモルフォスに単なるクレーターができただけでなく、小惑星全体の形が変形したことがうかがえる。調査結果について記した論文は26日、天文学の専門誌ネイチャー・アストロノミーに掲載された。
(この記事はCNN.co.jpからの転載です)