「だいち2号」活用、ニッケル採掘の生物多様性に及ぼす影響を評価--JAXAプロジェクトに採択

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「だいち2号」活用、ニッケル採掘の生物多様性に及ぼす影響を評価–JAXAプロジェクトに採択

2023.12.14 13:50

佐藤信彦

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 琉球大学発スタートアップのシンク・ネイチャー(沖縄県西原町)は、同社が提案していた陸域観測技術衛星「だいち2号」(ALOS-2)のデータを活用する取り組み「生物多様性へのインパクト評価のための鉱山露天掘り状況の空間可視化」が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)による事業化実証プロジェクトのテーマに採択されたと発表した。

 地球で失われつつある生物多様性だが、改善を目指す国際目標「ネイチャーポジティブ(自然再興)」が設定されている。それによると、2020年代に多様性の損失を食い止め、2030年には回復軌道に乗せる方針だ。

 ただし、生物多様性の要素は複雑で、消失や回復を数値的に示すことが難しいという。これに対し、シンク・ネイチャーはさまざまなデータ分析手法を用いることで、定量的な効果量測定を可能にしたとしている。

2030年に回復軌道に乗せる方針の2030年に回復軌道に乗せる方針(出典:シンク・ネイチャー)
2030年に回復軌道に乗せる方針の2030年に回復軌道に乗せる方針(出典:シンク・ネイチャー)

 一方、露天掘りが主流のニッケルなどのレアメタル採掘は、森林生態系のような自然に及ぼす影響が極めて大きい。シンク・ネイチャーは、人工衛星でモニタリングした露天掘り鉱山の状況と、同社の持つ技術を組み合わせ、生物多様性の損失を高い精度で可視化するシステムの開発を目指す。

 具体的には、だいち2号の「Lバンド」の合成開口レーダー(SAR)「PALSAR-2」で得たデータなどを活用し、インドネシアのニッケル露天掘り鉱山の時空間的な開発実態を検出できる人工知能(AI)を開発する計画。ニッケル採掘に伴う多様性の消失量、野生生物の絶滅リスク、生態系の炭素貯留機能の劣化量を評価する。

だいち2号のLバンドSARを活用(出典:JAXA)
だいち2号のLバンドSARを活用(出典:JAXA)

 シンク・ネイチャーは、レアメタル活用による脱炭素化の取り組みとネイチャーポジティブを両立しうる、鉱山開発のあり方を検討するための基盤ツールを開発する、としている。

 マイクロ波の周波数帯域のひとつであるLバンド(L帯)は、1GHz帯の極超短波にあたり、波長150~300mm、1~2GHzの電波で衛星電話や携帯電話などの通信などにも利用されている。だいち2号に搭載されているPALSAR-2の周波数は1.2GHz帯。PALSAR-2の分解能は、観測幅が350kmだと100m、観測幅が50km、70kmだと3~10m。

だいち2号に搭載されているPALSAR-2(出典:JAXA)
だいち2号に搭載されているPALSAR-2(出典:JAXA)

関連リンク
シンク・ネイチャープレスリリース(PR TIMES)
だいち2号紹介ページ

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