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ソフトバンク、HAPSから飛ぶ電波の方向や強度の推定モデル開発–国際標準化
2023.10.27 07:30
ソフトバンクは10月26日、成層圏通信プラットフォーム(High Altitude Platform Station:HAPS)の移動通信システムを実現するための「移動局側の電波到来方向推定モデル」を新たに開発したと発表した。
HAPSを通信ネットワークインフラとして活用する際には、さまざまな環境下で成層圏から地上に向けて発信する電波が届く範囲などを正確に推定する必要がある。
その推定に必要な手法として、HAPS向けの「電波伝搬推定法」がある。電波伝搬推定法は、主に隣国同士や異なる無線通信システム間の電波干渉を調整するために不可欠な「干渉検討用電波伝搬推定法」と、HAPSの機体数や配置、アンテナ設計などを詳細に検討するための「システムデザイン用電波伝搬推定法」で構成されている。
今回開発した「移動局側の電波到来方向推定モデル」は、「システムデザイン用電波伝搬推定法」の一部として、HAPSと移動局間の位置関係(仰角や方位角など)や移動局周辺の環境(周辺の建物の高さや道路幅など)を考慮し、HAPSから移動局への電波の方向と電波強度を推定するものとして国際標準化を達成したという。
国際電気通信連合(International Telecommunication Union:ITU)の部門の一つである無線通信部門(ITU-R)は、無線通信に関して標準化や勧告を担う機関。ソフトバンクの「移動局側の電波到来方向推定モデル」は、ITU-RのHAPS向け「電波伝搬推定法」に追加、改訂され、「ITU-R勧告P.1409-3」として発行されているという。
ソフトバンクによると、「システムデザイン用電波伝搬推定法」の一部である、「人体遮蔽損失モデル」で考慮される都市や郊外地でのマルチパス環境も推定できると説明。建物による電波の損失を詳細に計算できるモデルの適用範囲についても国際標準化を達成した。
建物による電波の損失を詳細に計算できるモデルでは、基地局の高さなどの適用範囲をこれまでより広げたことで、非地上系ネットワーク(Non-Terrestrial Network:NTN)などの上空と地上の間の電波環境でも計算可能という。
今回の国際標準化で、APSの商用化を目指す世界各国の事業者は、このモデルを活用することで、HAPSの無線通信システムを効率的に設計できるようになるとメリットを強調している。
ソフトバンクは、HAPSの商用化に向けた国際標準化活動をはじめ、各国の規制当局に対する働きかけやHAPSのエコシステム構築などを引き続き推進していくという。
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