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東洋製罐、段ボール製閉鎖環境検証モジュール開発–宇宙を模した実験生活に対応
2022.05.02 08:00
東洋製罐グループホールディングス(東京都品川区)は4月28日、宇宙開発向けの閉鎖環境検証モジュール「DAN DAN DOME SPACE」を開発したと発表した。
さまざまな課題に向き合うことでイノベーションを起こし、より豊かな社会の実現を目指すというプロジェクト「OPEN UP! PROJECT」の一環として開発。2021年秋に販売したダンボール製テント「DAN DAN DOME」に、今回開発した連結パーツを組み合わせることで、空間を拡張できるという。
宇宙空間での想定外の事象への対応を事前に検証するためには、閉鎖環境における検証や実験が必要となる。一方で、大々的な閉鎖実験場を作るにはコストや時間もかかり、維持や運営にもかなりの工数がかかるほか、さまざまな状況を見据えた拡張性をもたせる必要があるなど、条件が厳しいのが実情だという。
今回開発したDAN DAN DOME SPACEは、南極越冬隊や火星実験生活などで1000日以上の踏査経験を持つという、特定非営利活動法人FIELD assistant代表の村上祐資氏の閉鎖環境検証ノウハウをもとに設計。東洋製罐グループでダンボールを製造、販売する日本トーカンパッケージ(東京都品川区)と共同で開発した。
使い捨てを前提とした組み立て式の工法を採用し、ダンボール素材でありながら宇宙を模した実験生活にも十分耐えうると説明。拡張性のある閉鎖環境検証モジュールとなっており、連結パーツと戸枠パーツを利用し、居住空間を増やしたり、倉庫や食堂といった用途に応じたレイアウトに変更したりできるとしている。
月や火星での基地建設ミッションを想定する、船外活動(Extravehicular Activity:EVA)訓練のツールとしても活用できるという。特殊な工具や脚立などを必要としない一方で、完成までには複数人の会話や助け合いが必要となるように、各パーツの大きさや組み立ての手順が設計されている。
同社によると、過去には海外の火星実験生活でクルーが模擬宇宙服を着用した状態でプロトタイプのDAN DAN DOMEの組み立てテストを実施。人間工学的な動作や集団行動の検証ツールとしての有効性も確認したという。
今後は、FIELD assistantと共同で、宇宙と地上管制の現場を想定し、遠隔地からの支援のあり方とモニタリング対象となる基地の内部空間の関係を検証するため、DAN DAN DOME SPACEを活用した実証実験を行っていく予定。