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スヌーピー、月へ飛ぶ–「Artemis I」相乗りキューブサット10機をみる

2022.11.21 08:00

佐藤信彦

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 米航空宇宙局(NASA)は、月探査計画「Artemis(アルテミス)」の初ミッション「Artemis I」において、ロケット打ち上げを成功させた。Artemisは、月に宇宙飛行士を送り、月面探査などを実施する計画。Artemis Iでは、新型ロケット「Space Launch System(SLS)」で無人の宇宙船「Orion(オリオン)」を打ち上げて月軌道を周回させ、最終的に地球へ帰還させる。

 SLSによるOrionの初打ち上げということで、Orionばかり注目されたミッションだった。しかし、今回のミッションでは、日本の「OMOTENASHI(おもてなし)」や「EQUULEUS(エクレウス)」を含め、10機のキューブサット(小型衛星)も一緒に打ち上げられた。

10機のキューブサットを一緒に打ち上げた(出典:NASA)
10機のキューブサットを一緒に打ち上げた(出典:NASA)

 以下では、これらキューブサットなどの概要を紹介しよう。ちなみに、キューブサットはSLSの2段目に相当する中間低温推進ステージ(ICPS)とOrionのあいだに設けられた「Orion Stage Adapter(OSA)」に搭載され、順次放出された。

Orion Stage Adapterにキューブサットを搭載(出典:NASA)
Orion Stage Adapterにキューブサットを搭載(出典:NASA)

OMOTENASHI
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と東京大学が開発した月着陸実証機で、今回のミッションで月に着陸する唯一の探査機。「Outstanding MOon exploration Technologies demonstrated by NAno Semi-Hard Impactor」という正式名称が示しているように、その目標はそれなりの速度(セミハード)で月面への着陸技術を実証すること

 ロケットからの分離には成功したものの、想定していない回転状態に陥り、太陽電池パドルを太陽に向けられず、運用に必要な電力が得られていない。通信が途絶えた状態になってしまった。現在、姿勢を回復させて通信を復帰させようと取り組んでいる(JAXAOMOTENASHI公式Twitterアカウント)。

EQUULEUS
 JAXAと東京大学の開発したキューブサットで、地球・月のラグランジュ点に向けて航行する軌道制御技術を実証することが主目的。プラズマの発する極端紫外光を観測する「PHOENIX」、月面衝突閃光と小惑星を観測する「DELPHINUS」というプロジェクトも実施する。

 ロケットからの分離に成功し、正常に機能している(JAXAJAXA公式TwitterアカウントEQUULEUS公式Twitterアカウント)。

ArgoMoon
 イタリア宇宙機関(Agenzia Spaziale Italiana:ASI)などの開発したキューブサット。ロケットから分離後、ICPSを撮影し、詳細な解析にその画像を利用する。さらに、高度を上げてから月の撮影も実施する。

 欧州宇宙機関(ESA)によると、通信の確立に成功した。

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