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ISS長期滞在、宇宙飛行士の動脈に「影響なし」

2025.07.30 17:43

塚本直樹

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 国際宇宙ステーション(ISS)での微小重力環境下での長期滞在が、宇宙飛行士の動脈には影響を及ぼさないことがわかった。6月10日付けで学術誌『Journal of Applied Physiology』に報告されている

 微小重力環境下での長期滞在では、骨密度が低下し、筋肉が萎縮し、眼球が腫れるなどの症状が現れる。研究者たちは今回、30代後半から50代後半の米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士13人を調査した。ISSでの滞在期間は4カ月から1年に及んだ。

 長期滞在から1年後、3年後、5年後の時点で参加者の頸動脈と上腕動脈の超音波画像を撮影すると、全員の動脈の状態は良好だったという。「ISSでの長期滞在は、心血管疾患の新たな症状や兆候の発症にはつながらなかった」と論文は記している。

 この研究では、宇宙飛行士の血液や尿サンプルから、心血管系にとって懸念すべき兆候である酸化ストレスと炎症が発見された。しかし、これらは地球に帰還後、1週間以内に消失した。心血管系は微小重力下での滞在に対して、非常に回復力が高いことが想定されるという。

 「生涯にわたる疾患リスクを判断するには、より大規模な宇宙飛行士の集団において、心血管系の継続的な長期追跡調査が必要だ。特に、地球低軌道(LEO)を超えて深宇宙の放射線に被ばくする宇宙飛行士はなおさらだ」と研究者らは記している。

関連情報
アメリカ生理学会プレスリリース
Journal of Applied Physiology掲載論文
Space.com

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