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スターリンク衛星、電波観測に大きく影響–搭載機器から電波が「漏れる」

2025.07.29 17:51

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 米Space Exploration Technologies(SpaceX、スペースX)が運用、提供する衛星ブロードバンドサービス「Starlink」(スターリンク)が宇宙観測に影響を与えていることが学術誌「Astronomy & Astrophysics」に報告された。

 数千個のアンテナを並べて宇宙を電波で観測する「Square Kilometre Array(SKA、スクエア・キロメートル・アレイ)」は2022年に建設が開始、完成すれば世界最大かつ最高感度という電波望遠鏡。そのプロトタイプ局で得られた7600万枚の画像を分析。すると、Starlink衛星からの電波放出が、一部のデータセットでは画像の最大30%に影響を及ぼしていたという。

 今回の研究では、1806機のStarlink衛星から11万2000件以上の電波放出が特定され、観測された干渉の多くは意図的なものではないことがわかった。このような干渉は、そのデータに依存する研究成果に影響を与える可能性がある。

 オーストラリア・カーティン大学の博士課程に在籍するDylan Grigg(ディラン・グリッグ)氏は、これらの意図しない電波放出は、衛星に搭載されている電子機器から発生している可能性があると指摘。「それらは意図的な信号の一部ではないため、天文学者がそれらを簡単に予測したり、除去したりすることはできない」

 「Starlinkは電波天文学にとって最も直接的かつ頻繁な潜在的干渉源」と語るGrigg氏は「電波天文学のために保護されていることになっている150.8MHzで特定した703機の衛星のように、信号が全く存在しないはずの帯域で発信している衛星も検出された」と説明する。

 カーティン大学の電波天文学研究所(CIRA)の事務局長であり、論文の共同著者であり、同大学の教授であるSteven Tingay氏は、衛星による電波観測の妨害を避けるために規制改善の余地があると主張する。「現在の国際電気通信連合(ITU)の規制は意図的な送信に焦点を当てており、この種の意図しない放射はカバーされていない」

 「Starlinkは唯一の衛星網ではないが、これまでのところ最大のネットワークであり、その放射は私たちのデータの中でますます目立つようになっている。今回の研究が、メガコンステレーションが電波天文学の研究に与える影響を規制する政策を更新するための国際的な取り組みを支援するものとなることを願っている。Starlinkは現行の規制に違反しておらず、何も悪いことをしていないことを指摘しておくことが重要だ。この件でSpaceXと進めた協議は建設的なものだった」(Tingay氏)

SKAは南アフリカの「SKA-Mid」とオーストラリアの「SKA-Low」で構成される。こちらはSKA-Mid(出典:SKAO)
SKAは南アフリカの「SKA-Mid」とオーストラリアの「SKA-Low」で構成される。こちらはSKA-Mid(出典:SKAO)

関連情報
カーティン大学プレスリリース
Astronomy & Astrophysics掲載論文
SKA Observatory
Space.com

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