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【現地レポート】北海道スペースポートから国内初の海外ロケット発射–4年ぶりの打ち上げで感じた熱気
2025.07.15 10:36
2025年7月12日午前11時40分、澄み切った十勝晴れの空に、一筋の白煙が力強く描かれた。この日、北海道大樹町の宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」から打ち上げられたのは、台湾の宇宙開発企業tiSPACEの日本法人jtSPACEが開発した全長12mの準軌道(サブオービタル)ロケット「VP01」。国内初となる海外企業のロケット打ち上げとなった。

既報の通り、VP01は目標高度の100kmには届かなかった。打ち上げ後の解析によれば、VP01は高度4km(速報値)に到達し、ランチャーの機能、分離機能、2段目の再点火など、ロケットの一部システムの動作を検証した。ロケット2段目は分離後、ミッションを遂行できないと判断し、飛行停止措置をとった。2段目の機体は射点から北1km未満の当縁川付近の警戒区域内の町有地に落下した。
結果としては失敗に終わったが、HOSPOとしても2021年にインターステラテクノロジズの「MOMO」6号機を打ち上げて以来、実に4年ぶりの打ち上げ。当日は久しぶりのロケット発射を見届けようと地元住民をはじめ多くの見学者が訪れた。ここでは、期待と興奮に包まれた現地の様子をレポートする。
延期アナウンス、そして突如のカウントダウン
打ち上げ当日の朝8時50分。見学会場となったHOSPOの滑走路には、地元住民や親子連れ、宇宙ファンなど多くの見学者が詰めかけ、会場は次第に熱気を帯びていった。天候は若干の薄曇り。地表付近には緩やかな風が吹き、絶好の観覧日和となった。来場者は思い思いに見学場所を選び、jtSPACEのロゴ入りの帽子やグッズを手に、打ち上げへの期待を膨らませていた。


予定されていた打ち上げ時刻は午前10時50分。しかし10時44分、見学会場に「安全確保の確認のため、打ち上げ時間を延期します」とのアナウンスが響き渡る。少し緊張の糸が緩む中、「正午までの打ち上げで調整中」との説明もあり、訪れた人々は静かにその時を待った。 そして、突如として「11時40分に打ち上げます」との最終アナウンス。発表からわずか2分後に迫る発射時刻に、会場は一気に緊張感に包まれた。

「VP01」ロケットが飛び立ち来場者から歓声
HOSPOを整備するSPACE COTAN代表取締役社長 兼 CEOの小田切義憲氏によるカウントダウンと共に、黒い機体が火を噴き、滑走路の先の木々の間からVP01は発射された。轟音と共に空へ駆け上がるその姿に、見学者からは「おお、行った!」と歓声が上がった。

固体燃料ロケットならではの高速上昇を見せ、順調に見えたVP01の飛行だったが、打ち上げから約10秒後に、機体の挙動に異変が生じた。姿勢制御が乱れ始め、機体は蛇行。約50秒後にはエンジン音が突然途絶え、燃焼が終了したことが明らかとなった。その直後、陸地側へ向けてロケットの2段目と思われる黒い円筒状の物体が落下する様子も目撃された。

飛行停止措置、そして明かされた「失敗」という結果
発射直後の興奮から一転、会場には不穏な空気が漂った。打ち上げの成否が分からない中、大樹町職員やHOSPO関係者が慌ただしく動く様子が目立ち始めた。そして午前11時59分、小田切氏が報道陣の前で「飛行停止措置が取られた」と説明。VP01の打ち上げが失敗に終わったことが正式に発表された。

打ち上げが失敗に終わったにも関わらず、会場には多くの感動の声が聞かれた。愛知県から訪れたという男性は、「黄色とオレンジの炎がはっきりと見えた。初めて生でロケットの打ち上げを見たが、とても感動した」と目を輝かせた。HOSPO関係者も「今回の試みでは多くの経験を得ることができた。改善点も明らかになったので、次の挑戦に必ずつなげていきたい」と前向きな姿勢を見せた。
今回は残念な結果となったが、国内初の海外ロケットの打ち上げは、北海道大樹町が“宇宙の玄関口”として成長していくうえでの新たな一歩と言えるだろう。
