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スターシップは「1キロいくら」の設計思想を根本から変える–スペースXの商業営業担当VPが来日
2025.07.11 07:05
米Space Exploration Technologies(SpaceX、スペースX)の商業営業担当 副社長であるStephanie Bednarek(ステファニー・ベッドナーレク)氏が来日し、アジア最大級の宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE 2025」に登壇。同社のこれまでの打ち上げ実績や、次世代巨大ロケット「Starship」が宇宙業界に与える影響について語った。

約17年前、Falcon 1ロケットの打ち上げ初成功の1週間前に入社したというBednarek氏。この17年間で、SpaceXだけでなく宇宙産業全体が大きく変化する様を目の当たりにしてきたと話す。現在はSpaceXの商業営業担当 副社長として、世界中の商業および政府の顧客と連携しながら、「Falcon 9」ロケットや次世代巨大ロケット「Starship」、宇宙船「Crew Dragon」などの打ち上げに携わっている。
SpaceXはこれまで500回以上の打ち上げミッションを達成しており、2025年には170回の打ち上げを目指している。また、5名のJAXA宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)に送り届けており、油井亀美也宇宙飛行士も間もなくISSへと打ち上げられる予定だ。

「Starship」は設計思想を根本から変える
Bednarek氏は、全長121mの次世代巨大ロケット「Starship」についても言及。質量・容積ともに圧倒的な能力を持ち、設計思想そのものを変える存在とし、ペイロード企業は衛星の設計や打ち上げ戦略を根本から見直すことになると強調した。「今後の衛星設計では『1kgあたりいくら』ではなく、全体としてどう効率的かを考える時代になる」
Starshipはすでに9回の試験飛行を重ねている。直近では3回連続で失敗に終わっているが、使用済みブースターの再利用に成功するなど、その都度さまざまなデータを得られていると説明する。FAA(米連邦航空局)からは年間25回の打ち上げ許可を取得しており、今後の商業化フェーズに向けた準備が着実に進んでいるとアピールした。
まずは、自社の通信衛星である「Starlink」の打ち上げから始め、成熟してきたタイミングで商業顧客に向けたサービスを始める計画だ。Falcon 9ロケットからの移行を考えているが、当初は重複期間を設ける予定だという。

その先に見据えるのは、人類を火星へと送り届けること。同社ではまず2026年にStarshipを打ち上げ、火星に無人着陸させることを目指している。「火星では、電力、建設、医療、農業、資源採掘など、あらゆるインフラが必要になる。これは全世界の総力戦であり、私たちは輸送の部分を担う。皆さんにはその先の未来を創造してほしい」
