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米アクシオムの若田光一飛行士、開発中の宇宙服を初テスト–プラダと共同開発

2025.07.09 14:20

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 米Axiom Space(アクシオム・スペース)は、同社と高級ファッションブランドPrada(プラダ)が共同で開発した宇宙服「Axiom Extravehicular Mobility Unit」(AxEMU)の無重力環境での初の有人テストを6月に実施した。米国時間7月8日にその様子が公開された。

 AxEMUは、月の南極を探査するミッション「Artemis III」(アルテミス3)での月面探査を想定して開発されている。今回のテストは、米航空宇宙局(NASA)の無重力環境試験施設(Neutral Buoyancy Laboratory:NBL)で実施。ジョンソン宇宙センター(JSC)にあるNBLは、縦60m、横30m、深さ12m。世界最大級と言われる屋内プールで、宇宙飛行士が月面作業や無重力下での宇宙遊泳をシミュレートできる。

 テストは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士で2024年4月からAxiomでアジア太平洋地域での宇宙飛行士兼最高技術責任者(CTO)を務めている若田光一氏が参加した。

 Axiomの船外活動(EVA)プログラムチームは、巨大なプール内で通信や呼吸、冷却システムの運用と能力をテストした。同社とNASAは月面でのEVA訓練のため、NBLでのテストを継続する予定だ。

若田氏とAxiomのEVAプログラムチームは、NBLで通信や呼吸、冷却システムの操作と機能をテストした(出典:Axiom)
若田氏とAxiomのEVAプログラムチームは、NBLで通信や呼吸、冷却システムの操作と機能をテストした(出典:Axiom)

 AxEMUは今年、NBLでの最初の3回の有人テスト、模擬的な低重力環境を提供するJSCの「重力免荷能動制御システム(Active Response Gravity Offload System:ARGOS)」での23回のテスト、月面ツールを使用した複数のフィールド評価、月の塵や砂(レゴリス)でのテストを実施した。EMUは月面探査車(LTV)との統合テストが続けられており、今年後半には詳細設計審査(CDR)に入る予定だ。

若田氏は、NBLでの試験中に月面に米国旗を立てるシミュレーションも行った(出典:NASA)
NBLでの試験中に月面に米国旗を立てる若田氏(出典:NASA)

 宇宙服は、宇宙船の中で着る船内服(与圧服)と宇宙船の外で着る船外服に分かれる。今回テストされた宇宙服はEVAで着ることから船外活動ユニット(Extravehicular Mobility Unit:EMU)とも呼ばれる。宇宙で生存するために不可欠なことから「小さな宇宙船」とも言われる。

(出典:Axiom / YouTube)

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Axiom Spaceプレスリリース

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