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ワープスペースなど、宇宙サイバーセキュリティで提携–攻撃シナリオやシステム障害をリアルに再現

2025.06.17 17:55

UchuBizスタッフ

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 ワープスペース(茨城県つくば市)とGMOインターネットグループでサイバー攻撃対策事業を展開するGMOサイバーセキュリティ byイエラエ(東京都渋谷区)は業務提携を開始した。6月12日に発表した。

 イエラエが培ってきたサイバーセキュリティの専門知識とワープスペースの宇宙デジタルツイン技術を融合することで、宇宙衛星システムでのセキュアな開発運用プラットフォームの実現に向けて共同研究を進めていく。

 提携の中核となるのは、宇宙システムのライフサイクル全体を網羅的にサポートするという開発運用プラットフォームの共同開発。このプラットフォームは、衛星コンステレーションを含む複雑な宇宙システムを仮想空間上に精密に再現するデジタルツイン技術を基盤として、サイバーセキュリティの要素を統合する。

 特に宇宙システムに関わる技術者の育成と高度なインシデントレスポンス訓練の実現で、このプラットフォームが重要な役割を果たすと期待している。

 宇宙衛星システムのセキュリティインシデント対応訓練では、いくつかの課題があるという。

 例えば、地上でのシミュレーション環境は、実際の宇宙環境や衛星システム特有の挙動を完全に再現することが困難と解説。訓練のためだけに地上用の実機モデルを開発することは費用や開発期間の面で現実的ではなく、仮に用意できたとしても、宇宙空間で発生するインシデントの物理的な影響までは観測できないため、訓練のリアリティに限界があるという。

 実験衛星を宇宙に打ち上げることも費用や開発期間の面から要求が非常に高いことに加え、宇宙空間では万が一の失敗が許されないというプレッシャーや通信の遅延、限られたリソースといった制約から実施できる訓練内容は限定されていたと解説する。

 2社は物理的な制約やコストの問題を乗り越え、地上にいながら忠実な仮想現実上で何度でもトライ&エラーができる、実践的な訓練環境の実現が必要不可欠と考えたとしている。

 共同で開発するプラットフォームは、こうした課題に対する画期的な解決策になると説明。高精度な宇宙デジタルツイン環境を活用することで、地上にいながらにして現実の宇宙空間で起こり得る、さまざまなサイバー攻撃シナリオやシステム障害をリアルに再現して、安全かつ効果的に体験できるという。

 宇宙システムの開発者や運用者は、実際のシステムに影響を与えることなく、複雑なインシデントへの対処能力を実践的に養うことができると説明。攻撃手法の分析や防御策のテスト、復旧手順の検証など、従来は困難とされてきた高度なセキュリティ訓練を繰り返し実施できるようになると解説している。

 イエラエは、脅威分析や脆弱性診断、インシデントレスポンスなどのサービスを提供。システム開発の初期段階からセキュリティを組み込む「セキュアバイデザイン」の思想を宇宙にもたらし、開発されるプラットフォーム自体が堅牢なセキュリティを備えるとし、プラットフォームの利用者が自らの宇宙システムの脅威分析やリスク評価を効果的に実施できるような機能と環境を整備する予定としている。

 ワープスペースは衛星本体や搭載機器の挙動、通信状態といった物理的な側面だけでなく、システム間の連携やデータフローまでを仮想空間に再現できる技術を応用して、プラットフォームの実現に向けて開発を進めていくという。

関連情報
ワープスペース プレスリリース

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