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2024年5月発生の磁気嵐、初めて命名–過去20年で最大、日本でもオーロラ観測

2025.05.21 18:00

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 2024年5月に発生した強力な磁気嵐は、著名な宇宙天気物理学者であるJennifer Lea Gannon(ジェニファー・リー・ギャノン)氏にちなんで「Storm Gannon」(ストーム・ギャノン)と名付けられた。Storm Gannonについて、米航空宇宙局(NASA)は過去20年で最大としている。

 2024年5月8~11日に太陽の表面で起きる「太陽フレア」とそれに伴う「コロナ質量放出(CME)」が発生し、CMEで大量のプラズマが地球に衝突。激しい磁気嵐を引き起こした

 地球の磁気や地球で生じる磁界が乱れる磁気嵐は、太陽のフレアで引き起こされ、プラズマが地球に向かって飛び散る。フレアの強度と方向によっては、これらの粒子が地球の極地で強力なオーロラを形成することがある。

 非常に強力な磁気嵐が発生すると、低緯度でもオーロラが出現することがある。過去20年で最大という強力な磁気嵐であるStorm Gannonのおかげで欧州や北米、日本でもオーロラが観測された

KAGAYA氏がX(旧Twitter)に公開した写真。2024年5月11日に青森県で撮影。NASAによると、日本でのオーロラは赤が一般的であり、マゼンタ色は珍しいという。赤色のオーロラの高度は約400マイル(約640km)だが、マゼンタ色のオーロラの高度は約600マイル(約965)と説明している(出典:KAGAYA氏公式Xアカウント)

 磁気嵐には通常、名前が付けられないことが多い。

 1859年に観測史上最大の太陽フレアが観測されたが、観測した英天文学者Richard Carrington氏にちなんで「Carrington Event(キャリントン・イベント)」と呼ばれるようになった。このCarrington Eventは、技術的に名前が付けられた初の事例だが、Storm Gannonは科学者による分類が始まって以降、名前が付けられた初の磁気嵐だ。

 Gannon氏は2024年5月2日に45歳の若さで、突然亡くなった。彼女は科学誌「Space Weather」の編集者として、200本以上の論文の掲載を手助けし、自身の論文も多く発表した。2019年4月からは編集委員会に所属し、最も長くその役職を務めていた。亡くなる数カ月には、米海洋大気庁(NOAA)の環境衛星データ情報局(National Enviromental Satellite,Data, and Information Sevice:NESDIS)の宇宙天気観測室で上級宇宙天気連絡官として勤務していた。

 世界気象機関(WMO)は通常、地上の嵐やハリケーン、サイクロンを21の名前リストから選ぶ。これらの名前は特別に大きなものでない限り、繰り返し使用されるが、磁気嵐の命名に関する公式な規則はない。Storm Gannonは磁気嵐の命名に関して新たなルールとなる可能性がある。

 NASAによると、Storm Gannonで地上では米中西部で高圧線が落ち、変圧器が過熱し、GPS誘導のトラクターがコースを外れ、その春の豪雨によってすでに遅れていた植え付け作業にさらなる混乱が生じたという。空中では、高い放射線被曝の脅威と、通信と航行の喪失で大西洋横断飛行は進路変更を余儀なくされた。

関連情報
NASA発表
KAGAYA氏公式X(旧Twitter)アカウント投稿
Space.com

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