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ispace、着陸船「レジリエンス」の月周回軌道投入に成功
2025.05.07 17:00
ispace(東京都中央区)が進める民間月探査計画「HAKUTO-R」のミッション2「SMBC×HAKUTO-R VENTURE MOON」で月着陸船(ランダー)「RESILIENCE」が月周回軌道投入(Lunar Orbit Insertion:LOI)マヌーバに成功した。ispaceが5月7日に発表した。
東京・日本橋にあるミッション・コントロール・センター(管制室)からispaceのエンジニアが運用計画に沿って、日本時間5月7日午前5時41分に最初のLOIマヌーバを開始、9分間の主推進系の燃料を完了。同社はミッション1に続いて、ランダーと搭載する貨物(ペイロード)を月周回軌道に輸送する技術能力と運用能力を実証したと説明する。
今回のLOIマヌーバについて同社は、VENTURE MOONでこれまで実施してきた全9回のマヌーバの中で最も長時間の燃焼が必要な非常にクリティカルな運用と説明する。予定通り月の重力圏への軌道投入を確認できると、入念に準備を進めてきたエンジニアたちには、緊張が解け安堵の表情が溢れたという。月面着陸に向けたカウントダウンが始まることになる。
RESILIENCEは、日本時間1月15日午後3時11分に打ち上げられた米Space Exploration Technologies(SpaceX、スペースX)のロケット「Falcon 9」で所定の軌道に投入され、同日午後4時44分に分離された。
地球周回フェーズを経て2月15日午前7時43分には月表面から高度約8400㎞の地点を通過し、民間企業による商業用ランダーとしては史上初となる「月フライバイ」に成功した。その後、低エネルギー遷移軌道上を約2カ月間、地球から最も離れた距離で約110万kmの地点まで到達した。
深宇宙の旅から帰ってきたRESILIENCEは今後、月周回軌道上で計画しているすべての軌道制御マヌーバの完了を5月28日頃に予定している。月着陸は6月6日を予定している。

VENTURE MOONは、前回のミッション1と同様に、月面に着陸するまでの10段階のマイルストーンが設定されており、マイルストーンごとの成功基準(サクセスクライテリア)を決めている。ミッション1と同様にミッションに途中で課題が発生しても、その事象だけを捉えて、単なる失敗と評価しないという考えがあるからだ。今回でVENTURE MOONのマイルストーンのサクセス7が完了した。

RESILIENCEは、以下のペイロードを月まで運んでいる。
- 高砂熱学工業=月面用水電解装置
- ユーグレナ=月面環境での食料生産実験を目指した自己完結型モジュール
- 台湾・国立中央大学宇宙科学工学科=深宇宙放射線プローブ
- バンダイナムコ研究所=GOI宇宙世紀憲章プレート
- ispace欧州法人ispace EUROPE=小型探査車(マイクロローバー)「TENACIOUS」
- スウェーデンのアーティストMikael Genberg氏による「ムーンハウス」
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ispaceプレスリリース