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スマホと衛星の直接通信「au Starlink Direct」が4月10日開始–iPhoneも対応、当面無料
2025.04.10 11:38
KDDIと沖縄セルラーは4月10日、SpaceXの衛星通信「Starlink」と連携し、スマートフォンと衛星の直接通信を可能にする日本初のサービス「au Starlink Direct」を4月10日に開始した。当初は衛星モード対応のiPhone(14以降)とAndroid(GalaxyやXperiaなど)50機種に対応する。auユーザーは申し込み不要で、当面は無料で利用できる。

au Starlink Directは、既存のau周波数を活用して、auスマートフォンが直接通信に対応するStarlink衛星とつながり、空が見える状況であれば圏外エリアでも通信できるサービス。まず、テキストメッセージ送受信(SMS/RCS/iMessage)、緊急地震速報などの受信、現在地の位置情報の共有などが可能になる。Androidユーザーは、Google のAIアシスタント「Gemini」なども利用できる。2025年夏以降にはテータ通信にも対応予定。

通常、Starlinkの衛星通信を利用するには、専用のアンテナを設置する必要があるため、当然ながらアンテナがない場所では利用できない。今回開始した、Starlink衛星とauスマートフォンとの直接通信では、Starlink衛星1つ1つが基地局の代わりになるため、衛星が通過する場所であればどこでも使えるようになる。なお、通常のStarlink衛星は地上約550Kmあたりを飛んでいるが、スマートフォン直接通信向けの衛星は約340Kmを飛んでおり、より地上に近い。
同社によれば、auの人口カバー率は99.9%を超えているが、日本特有の地形により、面積カバー率は約60%となっている。日本全土をカバーするau Starlink Directによって、残りの約40%の面積でも通信可能となり、通信環境の整備が困難な山間部や島しょ部、キャンプ場や海上などでも連絡が取れるようになるとしている。
2025年4月時点の対応機種は50機種で、内訳はAndroidスマートフォンが、Galaxy(20機種)、Xperia(5機種)、Google Pixel(5機種)、Xiaomi(2機種)、Redmi(2機種)、AQUOS sense(2機種)、TORQUE(1機種)の計37機種。iPhoneが14以降の13機種となる。
同社は、2024年10月に沖縄久米島での実証実験で、Starlink衛星とauスマートフォンの直接通信に初めて成功した。この際には、Androidスマートフォンのみに対応しており、iPhone向けについてはアップルと協議中と説明していたが、サービス開始時にはiPhoneも間に合ったようだ。

イーロン・マスク氏の影響は?
StarlinkはSpaceXが提供していることもあり、同日のKDDIの記者発表会では、SpaceXを率いるイーロン・マスク氏の影響についても質問がおよんだ。マスク氏は3月に「Starlinkを停止すれば、ウクライナ軍の前線全体が崩壊する」とXに投稿し、物議を醸していた。
4月1日付でKDDI新社長に就任したばかりの松田浩路氏は、今回のStarlinkとの連携を主導してきた人物でもある。松田氏は、国内のメインエリアは自社で対応しており、当初のStarlinkはあくまで通信環境の整備が困難なエリアのカバーになると説明する。
また、SpaceXとは長期にわたる信頼関係を構築しており、2024年の能登半島地震の際には、SpaceXの日本法人「Starlink Japan」と協力して、Starlinkアンテナを避難所などに無償提供するなどして、現地の通信回復に努めたと、両者の関係性をアピールした。

日本での直接通信開始にあたり、SpaceXのPresident & COOであるGwynne Shotwell氏は「アジア初、そして世界でも先駆けとなる衛星とスマートフォンの直接通信サービスを、KDDIとともに、日本で実現できることを大変嬉しく思う。au Starlink Directによって、日本のどこにいても、つながるようになる。災害時や緊急時に命を救うかもしれない、新たな可能性と価値をもたらす」とコメントした。