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アクセルスペース、2026年に衛星10機超え体制へ–「日本の6倍の面積」を1日で撮影可能に

2025.04.09 15:35

藤井 涼(編集部)

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 小型の光学衛星を開発するアクセルスペース(東京都中央区)は4月9日、次世代地球観測衛星である「GRUS-3」(グルーススリー)を2026年に7機打ち上げることを発表した。すでに運用している5機の「GRUS-1」とあわせて10機以上の体制を構築することで、撮影頻度を従来の2〜3日に1回から、1日1回まで高める。

「GRUS-3」を発表するアクセルスペース代表取締役 CEOの中村友哉氏
衛星コンステレーションの変遷。2022年に「GRUS-2」の打ち上げを予定していたがウクライナ情勢を鑑みてキャンセルしたという

 同社は、2019年より地球観測データ提供事業「AxelGlobe」(アクセルグローブ)を展開。現在は、2018年に1機、2021年に4機打ち上げた小型光学衛星「GRUS-1」(グルースワン)によって5機体制を構築し、国内最多機数の商用光学衛星コンステレーションを提供している。

 AxelGlobeでは、衛星画像を利用して、顧客の情報収集や意思決定に役立つデータを提供している。具体的には、植生の活性度や森林伐採の時間的変化の把握、浸水可能性地域の可視化などだ。能登半島地震や岩手県の山火事の際には、緊急撮影した画像データを報道機関などに向けて公開した。

 同社はすでに、世界30カ国以上の行政機関や民間企業にAxelGlobeを提供しているという。地域別では、国内が67%、海外が33%となっている。また世界の顧客の66%が民間企業、34%が政府案件だ。民間市場がこれから立ち上がる日本では、政府案件の方が51%と、民間企業よりわずかに高いという。

次世代衛星で「日本の6倍の面積」を1日で撮影

 同日発表されたGRUS-3は、1機あたりの観測幅28.3km×最長観測距離1356kmとなっており、7機をあわせた1日の撮影能力は、日本の面積の約6倍となる最大230万km²におよぶという。ここに、5機のGRUS-1をあわせた1日の撮影能力75万km²が加わるとしている。また、GRUS-1(5機)では2〜3日に1回の撮影頻度だったが、GRUS-3(7機)では同一時点をほぼ同時刻に毎日撮影できるようになると説明した。

 GRUS-3のサイズは幅96cm×縦78cm×高さ126cmで、重量は約150kg。地上分解能は2.2m(中分解能)となる。運用軌道は太陽同期軌道で高度は585km。観測バンドには新たに水中を観測できるコースタルブルーが追加された。これにより、水中のCO2を固定する沿岸部の藻場などが把握できるようになり、サンゴ礁やマングローブなどのモニタリングが可能になるとしている。

 なお、GRUS-3の打ち上げに先駆けて、性能検証のための小型衛星「GRUS-3α」(グルーススリーアルファ)を2025年夏に米カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地より、SpaceXのFalcon 9ロケットによって打ち上げる予定。望遠鏡を含む光学システムや衛星汎用バスシステムの性能を検証するとしている。

性能検証のための小型衛星「GRUS-3α」。同社クリーンルームの外より撮影

 

 

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