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JAMSSなど、「生体模倣システム」の宇宙利用にめど–従来の細胞培養より生体に近い環境を再現
2025.03.27 15:00
有人宇宙システム(JAMSS)は3月27日、東京応化工業(TOK、川崎市中原区)や東海大学と共同で宇宙用の「生体模倣システム(Micro Physiological Systems:MPS)」装置の地上試作品を開発、細胞を使用した実証実験に成功したと発表した。
MPSは、ヒトの細胞や組織を実験装置上で精密に培養することで従来の細胞培養技術よりも生体に近い環境を再現できるシステムという。複数の臓器特異的細胞を連結することで臓器間相互作用を評価できるとしている。
MPSの技術は、医薬品や食品、化粧品などの開発過程で従来の動物実験やヒトによる臨床試験に代わる新たな手法として注目されていると説明。2022年から米国で「米食品医薬品局(FDA)近代化法 2.0」と呼ばれる法律が施行され、新薬の開発過程での動物試験の義務が撤廃されている。このことも動物実験代替手法としてMPSへの期待が高まる大きな流れになるという。
欧米や日本でも、MPSの技術開発や社会実装に向けた取り組みが積極的に進められていると解説。宇宙分野では、米航空宇宙局(NASA)をはじめ、米国企業や大学が、国際宇宙ステーション(ISS)の微小重力環境下でMPSを構築する「Tissue Chips in Space」プロジェクトに取り組んでおり、宇宙でのMPS利用にも注目が集まっているとしている。

JAMSSは、自社で開発した宇宙創薬研究支援としてタンパク質結晶生成サービス「Kirara」を展開してきているが、次の展開として宇宙環境でのMPSの実用化に着目し、新たな宇宙創薬研究支援の可能性を見いだしたという。MPS装置の開発と製品化を進めている東海大学 マイクロ・ナノ研究開発センター/工学部 生物工学科教授 木村啓志氏やTOKとともに2023年から共同研究を始めた。
宇宙用MPS装置の地上品の開発過程では、ISSに搭載して運用するために装置の設計に対して安全性などの厳しい要件を満たすための設計変更や調整などの「宇宙仕様化」の需要課題である「流路閉鎖系化」にも成功し、マイクロデバイスでの流体制御技術も確立したと説明する(軌道上では、流体の挙動が地上と異なり、水球となって浮かび上がる。これを防ぎ、流体を意図したように流すために、閉鎖的な管などで流れを制御するのが「流路閉鎖系化」)。
宇宙用MPS装置は、宇宙に輸送するためのコストや宇宙飛行士の操作性なども考慮して20cm×20cm×20cmの2Uのサイズ。同装置を活用して、宇宙への輸送やISS内での実験スケジュールを想定した細胞培養実験に成功し、宇宙への適応性検証完了にもめどを立てたという。
これらの成果を踏まえて、3者は「宇宙×MPS」ミッションを開始し、地上での医薬品や食品、化粧品などの開発への応用を図るとともに、宇宙用MPSを活用したサービスの創出を目指すとしている。
ISSは2023年で運用が終了する予定。3者は民間企業が開発、運用する宇宙ステーションも見据えて、宇宙用MPS装置の開発を進めるとしている。

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