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地球のGPS信号、月面での捕捉に成功–月や火星へのナビに応用できる可能性

2025.03.06 08:00

UchuBizスタッフ

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 米月着陸船(ランダー)「Blue Ghost」に搭載された「LuGRE」が地球を周回している全球測位衛星システム(GNSS)の信号を月面で捉えることに成功した。米国時間3月4日に発表された。

 月GNSS受信機実験であるLuGRE(Lunar GNSS Receiver Experiment)は、NASAのゴダード宇宙飛行センターとイタリア宇宙機関(Agenzia Spaziale Italiana:ASI、Italian Space Agency:ISA)が共同で開発。米「Global Positioning System(GPS)」と欧州「Galileo」の信号を月での「測位や航法、タイミング(Positioning,Navigation and Timing:PNT)」に活用できるかを実証することが目的。

 NASAは、LuGREが月周回軌道と月面で信号を捕捉できたことは、地球を周回するGNSSからの信号を月で受信し、追跡できることを示していると解説する。NASAが主導する国際的な月探査計画「Artemis」をはじめとする、その他のミッションがGNSSからの信号を利用して位置や速度、時間を正確かつ自律的に判断できることを意味していると説明。月と火星での高度な航法(ナビゲーション)のシステムとサービスへの足掛かりになるとしている。

 米Firefly Aerospaceが設計、製造したBlue Ghostは1月15日に打ち上げ。同ランダーによる月着陸ミッション「Ghost Riders in the Sky」は観測機器や技術実証機器などの貨物(ペイロード)の月への輸送をNASAが企業に有償で委託する「商業月面輸送サービス(CLPS)」の一環。

 Blue Ghostは米中部時間3月2日午前2時34分に月への着陸に成功。LuGREを含む10のペイロードを月に運ぶことに成功した。同ランダーの月着陸後すぐにLuGREを運用するゴダード宇宙飛行センターは活動を開始した。

 3月3日、米東部時間午前2時(米中部時間午前1時)にLuGREが月面で信号を取得して追跡、地球から約36万2100km(22万5000マイル)離れた地点でナビゲーションの確定に成功したことが明らかになった。

 打ち上げから6日後の1月21日、LuGREは地球から約33万780km(20万9900マイル)という離れた地点でGNSSの信号を捉えた。2月20日に地球から約39万1070km(24万3000マイル)という月周回軌道にLuGREは到達し、信号を捕捉することに成功した。これは、地球と月の空間でもナビゲーションの修正に地球のGNSS信号を利用できる可能性があることを意味しているとNASAは解説している。

月への輸送中である20万5674マイル(約33万1000km)、月の周回軌道上で24万3000マイル(約39万1070km)のところでLuGREはGNSS信号を捉えている(出典:NASA / Dave Ryan)
月への輸送中である20万5674マイル(約33万1000km)、月の周回軌道上で24万3000マイル(約39万1070km)のところでLuGREはGNSS信号を捉えている(出典:NASA / Dave Ryan)

 NASAはこれまで、搭載されるセンサーや地球上の地上局からの信号などさまざまな方法を組み合わせて宇宙機を追跡してきた。LuGREは、地球を周回するGNSSの信号をナビゲーションに使用することで、月のような遠い場所でも宇宙機が自律的に受信して使用できる、つまりは人間のオペレーターへの依存度を低下できることを実証しているとNASAは説明している。

振動試験中のLuGRE(出典:NASA / GSFC)
振動試験中のLuGRE(出典:NASA / GSFC)

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