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宇宙領域における「横浜」のポテンシャルは?–「YOXO FESTIVAL 2025」で議論

2025.03.05 09:00

清水海羽

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 イノベーターやクリエーターが未来に向けた新しいアイデアや技術を横浜に持ち寄り、領域を越えて交流する大型イベント「YOXO FESTIVAL 2025」が1月25日と26日の2日間にわたり、横浜みなとみらいで開催された。同イベントの「YOKOHAMA 宇宙Days」にて、SIC有人宇宙学研究センターは、横浜未来機構横浜×宇宙プロジェクトと共同で、出展や関係者による講演を開催した。

 ここでは、2日目となる1月26日に開催されたセッション「横浜から宇宙ビジネスの未来を語ろう」の模様を紹介する。横浜が“宇宙への港”として新たに飛翔するために、どのような貢献ができるのかについて、第一線で活躍するプレイヤーたちが語った。

 登壇者は、カエラムコンシリアムの森裕和氏、スペースデータの片山俊大氏、清水建設の菅原渡氏、スペースシフトの金本成生氏、日揮グローバルの深浦希峰氏、元JAXA研究員のゆうこ博士、京都大学の山敷庸亮氏。モデレーターはUchuBiz編集長の藤井涼が務めた。

2040年の「宇宙での人々の暮らしやビジネス」への期待

 1つ目のテーマは「2040年の『宇宙での人々の暮らしやビジネス』への期待と、その未来に対してどのようなアプローチをしていきたいか」について。

 日揮グローバルの深浦氏は、同社が「月面推薬生成プラント」の実現を目指していることから、宇宙へ向かうポートの建設を望んだ。清水建設の菅原氏は、さまざまな企業との共同研究によって月面基地の建設に近づいてきていると述べた上で、2040年には、日本国内の複数の企業が協力して“オールジャパン”で宇宙開発に取り組む必要があると提起した。

 カエラムコンシリアムの森氏はさまざまな肩書きを持つが、その中で自らが北米代表も務める、水中で宇宙飛行士訓練を提供するBlue Abyssを紹介。2040年には宇宙飛行士の数も増え、より多くの訓練機会が求められるようになると予想されることから、海洋を使った潜水による低重力環境の再現によって、有人宇宙活動に貢献できると説明した。

 スペースデータの片山氏は、日本にスペースポート(宇宙港)を普及させるための組織「Space Port Japan」の理事も務める。同氏はスペースポートの開発を官民連携で戦略的に進めていくことを提唱しており、日本のスペースポート建設の立地の良さを踏まえた上で、国としての今後の姿勢に着目したいと期待を寄せた。衛星データ活用企業であるスペースシフトの金本氏は、SAR(合成開口レーダー)衛星を基軸にしたデータをリアルタイムに活用することで、より優れた社会が訪れる未来を展望した。

 宇宙と生き物の研究者であるゆうこ博士は、近未来の宇宙社会を構築するために、10代の子どもたちに対する具体的な宇宙教育の大切さを語った。教育的な視点でスペースデータの片山氏は、同社が国際宇宙ステーション(ISS)をデジタル上に再現したシミュレーター「ISS Simulator」などを手がけていることから、データを直感的に取り込める環境や教育基盤の重要視を語った。

 宇宙移住をはじめとする有人宇宙学を研究する京都大学の山敷氏は、宇宙で暮らす上での二大障壁として「低重力」「宇宙放射線」をあげたが、同時に宇宙空間の“快適性”について紹介。宇宙飛行士らの発言を元に「宇宙での無重力環境があまりにも快適であるため、長時間宇宙環境に慣れると地球上の重力負荷に耐えられなくなる」と説明した。

宇宙領域における「横浜」のポテンシャルは?

 2つ目のテーマは、「宇宙領域における横浜のポテンシャル」について。ゆうこ博士は、横浜における子どもの多さや教育への強みを生かした宇宙教育に期待する。また、スペースシフトの金本氏は、最先端の衛星技術利用を促進する街としての横浜市との技術連携について期待を寄せた。

 カエラムコンシリアムの森氏は、欧州などで進んでいる海洋による宇宙活用を横浜でも実現できる可能性について述べた。スペースデータの片山氏は、横浜が持つエンタメ性を評価しつつ、シンギュラリティが起こると予測されている今後に向けて、宇宙と地球の仮想空間「デジタルツイン」を整備することが重要だと語った。

 横浜にスペースポートを建設すべきかについても話題が及んだ。清水建設の菅原氏は、首都圏に近い横浜に設けることで宇宙へアクセスしやすくなると言及する一方で、片山氏からはSpace Port Japanの立場から、現実的な難しさなども語られた。

 最後に京都大学の山敷氏は、横浜市の未来について「“宇宙への港”を合言葉に、文化、宇宙技術、宇宙海洋の実現を通じて、横浜市民が住みたいと思う宇宙を実現していきたい」と思いを語り、セッションを締めくくった。

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