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独ATMOS、地球への貨物帰還カプセルを4月にも打ち上げ–初期バージョンは最大100kgを運搬
ドイツのATMOS Space Cargoは現地時間2月5日、宇宙から地球に貨物を帰還させる大気圏再突入カプセル「PHOENIX」を、Space Exploration Technologies(SpaceX、スペースX)のロケットによって4月にも打ち上げると発表した。欧州企業として初の大気圏再突入を試みる。
PHOENIXは、軌道上で作られた高価値な製品を地球に安全に輸送することを目標としており、特にバイオ医療分野での需要が見込まれている。
PHOENIXには、耐熱シールドと高速パラシュートの役割を兼ねる、インフレータブル大気減速装置(Inflatable Atmospheric Decelerator:IAD)が搭載されている。軌道上で膨張し、秒速約7800m(時速約2万8000km)の軌道速度からパラシュートなしで着水できる速度まで減速させられるという。
初期バージョンのPHOENIXは最大100kgを地球に運搬可能だが、将来的には数トンの輸送能力を持つ予定だ。これにより、ロケット上段のような物体の回収も可能になるとしている。
「生命科学研究、特に幹細胞やタンパク質結晶化などの分野は、宇宙に大きなメリットがある。実験の打ち上げはより簡単で安価になったが、地球への回収は高コスト、長いリードタイム、再現性、信頼性の問題が依然と存在している」とAtmosは述べている。
PHOENIXには、ドイツ航空宇宙センター(DLR)の放射線検出器や、英Frontier Spaceの宇宙実験装置、日本のIDDKが開発する、従来の顕微鏡とは全く異なる原理の顕微観察技術「マイクロイメージングデバイス」(MID)を活用した宇宙実験装置などのペイロードが搭載される。
ATMOSは、今回のPHOENIXをプロトタイプとしている。試験飛行では、「軌道上でカプセルとサブコンポーネントから飛行中のデータを収集する」「搭載する顧客ペイロードから科学データを収集する」「大気圏再突入時にIADの展開と安定化に成功」という3つの目標を掲げた。しかし、同社はカプセルは再突入中に破壊されることで終了し、次のカプセルに貴重な飛行データを提供すると説明している。
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