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「宇宙天気予報」で米エアロスペースとグーグルが協力–膨大な太陽データを機械学習
米連邦政府の資金提供を受けて研究機関を運営する非営利法人であるThe Aerospace Corporation(エアロスペース・コーポレーション、Aerospace)はGoogle Public Sector(グーグル・パブリック・セクター)と協力し、人工知能(AI)とハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)を活用して、太陽活動の予測精度を高める取り組みを進めている。米国時間1月28日に発表した。
Aerospaceによれば、両社の協力の目的は地磁気嵐を「これまでにない精度と速度」で数日前に予測する能力を向上させることにあるという。これまで、宇宙天気予報は太陽フレアやコロナ質量放出(CME)の予測に苦労してきた。
その理由の一つは、太陽活動の複雑さと観測データの膨大さにある。具体的に言えば、太陽観測衛星「Solar Dynamics Observatory(SDO)」だけでも1日に約7万枚の画像を撮影しており、それぞれに太陽活動に関する貴重な情報が含まれている。複数の波長、数十年にわたるこのデータを分析し、隠れたパターンを特定することは、信頼できる長期予測モデルを開発する上で大きな障害となっているという。
今回のパートナーシップの一環としてGoogle Cloudの機械学習プラットフォーム「Vertex AI」を活用し、予測の高度化に取り組む。
「宇宙天気予報には複数のデータソースやデータの種類、機械学習モデルが関わっており、HPCがなければ学習時間が極端に長くなり、意味のある進展を遂げることは不可能だ」と、Aerospaceのデータサイエンスチームを率いるシニアエンジニアスペシャリストのAlison Kremer氏は海外メディアのSpaceNewsに述べている。
SDOのデータに加えて、宇宙天気に関する公開情報は米航空宇宙局(NASA)や米大気海洋庁(NOAA)、米国立科学財団(National Science Foundation:NSF)、欧州宇宙機関(ESA)などの政府機関から提供されている。Kremer氏によると、この膨大なデータセットに対して、バイアスを最小化する方法で機械学習モデルをトレーニングすることは「計算上困難である」という。
11年周期である太陽は現在、「極大期」に入ったと考えられている。大規模な太陽フレアは、通信衛星や測位衛星などに影響を与えることがある。