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「宇宙水道局」の天地人、自社での衛星開発を発表–2027年までの打ち上げを目指す
2025.01.27 12:14
衛星データベンチャーの天地人(東京都中央区)は1月27日、人工衛星を自社開発することを発表した。既存の衛星データと、自社で新たに取得する衛星データを組み合わせることで、より高解像度な地表面温度の情報を取得するとしている。2027年までの打ち上げを目指す。

同社では、宇宙ビッグデータを活用した水道管の漏水リスク管理業務システム「天地人コンパス 宇宙水道局」を提供している。地表面の温度を始め、複数の人工衛星が観測したデータやオープンデータから、約100m四方の範囲内で漏水リスクの可能性区域を5段階で確認・管理できるサービスだ。漏水検出とともに修理計画の立案も支援する。
同社によれば、宇宙水道局によって水道管の点検費用は最大65%、調査期間は最大85%の削減が期待できるという。2023年のサービス開始から1年半で、東京都や札幌市など20以上の自治体に採用されている。また、世界9カ国でPoC(概念実証)などの形でサービス導入が始まっているとのこと。

これまで宇宙水道局は、気象衛星「ひまわり」や気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)のデータ、さらに海外の人工衛星データを統合して、約250mメッシュの解像度で地表面温度情報を取得していたという。今後は、自社衛星のデータも加えることで、数十メートル規模まで高解像度化できるとしている。これにより、宇宙水道局の精度を上げるほか、農業や再生エネルギーなど他領域にも活用したい考えだ。
同社では、この自社衛星開発によって地表面温度観測を強化する取り組みを「Thermo Earth of Love プロジェクト」(地表面温度観測衛星計画)と名づけた。地表面温度が教えてくれる地球からの温もり(Thermo Earth)と、地球への想いや愛情(Love)を込めて、このネーミングにしたという。衛星写真、SAR画像に次ぐ第3の技術として、地表面温度のデータ拡充に注力する。

「業界の垂直統合」に挑戦する
天地人の副社長である百束泰俊氏は、JAXAにおいて長年にわたり人工衛星の開発に携わってきた経験を持つ。百束氏は、今後同社が(1)衛星開発、(2)データプラットフォーム、(3)解析サービス、(4)ソリューションのすべてを手がける数少ない企業になると説明し、「ソリューションに軸足がある天地人が、業界の垂直統合に挑戦する」と意気込む。

衛星の製造パートナーについては現時点では非公開とのことだが、すでに主要なサプライヤーとはコミュニケーションをとっているという。ロケット打ち上げ事業者は未定だが、当初は技術実証から始めるため、ロケットによって小型衛星を相乗りで打ち上げるライドシェアを検討しているとのこと。
同日の記者発表会では、天地人の代表取締役である櫻庭康人氏も登壇。2019年の創業時より同社の売上は18倍に成長していると胸を張る。2025年はさらに倍の売上規模を目指すとしており、自社衛星を打ち上げる翌年の2028年にはIPO(株式上場)も目指したいと語った。