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日本生まれの世界初「木造衛星」をNASAが評価–「従来の衛星に代わる、より持続可能な選択肢」
2024年12月に国際宇宙ステーション(ISS)から地球低軌道(LEO)に放出された世界初の木造衛星「LignoSat」1号機について米航空宇宙局(NASA)は「従来の人工衛星に代わる、より持続可能な選択肢を提供する可能性がある」と説明している。LignoSatは京都大学と住友林業が開発した。
キューブサットであるLignoSatは、「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」として開発された衛星で、住友林業の紋別社有林で伐採したホオノキ材を使用(大きさは1U=10cm×10cm×10cm)。構体はネジや接着剤を一切使わず精緻かつ強固に組み上げる「留形隠し蟻組接ぎ(とめがたかくしありくみつぎ)」と呼ばれる、日本古来の伝統的技法を採用している。
LignoStella Projectでは2022年3月から10カ月間、木材を宇宙空間に曝露し、適正な木材としてホオノキを選定した。宇宙空間に放出されたLignoSatは搭載されたセンサーで木材の歪みを評価し、宇宙空間での温度や放射線に対する反応を測定する。地磁気レベルを観測することで、衛星の機能にどのように影響するかどうかも調べる。
NASAは「宇宙で木材の利用法を調査することは、将来的に革新的なソリューションにつながる可能性がある」と解説している。従来のアルミニウム合金などでつくられる衛星は、大気圏再突入で燃焼する時に「アルミナ粒子」と呼ばれる微粒子が発生し、地球の気候や通信に悪影響をおよぼす可能性があるとされている。
京都大学は、今回の1号機の開発ノウハウと運用データを今後計画している2号機の設計や2号機で計測するデータの基礎資料として活用する。住友林業は、得られたデータを分析し、ナノレベルでの物質劣化の根本的なメカニズムを研究するとしている。