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IHIエアロスペース、欧州企業から民間衛星向け小型スラスターを受注

2022.08.23 11:30

飯塚直

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 IHIエアロスペース(東京都江東区)は8月22日、欧州の宇宙衛星推進系メーカーであるOHBグループの傘下OHB Swedenから衛星の姿勢制御や軌道制御に使われる小型推進器(スラスター)「1Nスラスタ」(MT-9)を受注したと発表した。

 同社は、宇宙関連の推進系システムを提供する企業。1953年に宇宙業界に参入し、衛星や打ち上げロケットの推進系システムやコンポーネントを開発、製造している。同社の製品は、日本国内はもとより、米国や欧州、アジア圏に輸出されており、これまで1000台以上の1液推進スラスターが軌道上での運用に成功している。

 今回注文を受けた1Nスラスタは、人工衛星に複数台搭載され、衛星の姿勢制御や軌道制御に使われる小型(推力:1ニュートン)のスラスター。推薬を供給する推薬弁やガス発生部、ヒーターや温度センサー類といった熱制御機器から構成され、推薬を触媒で分解し、高温ガスを発生することで推力を出す装置となる。

 同社は、2012年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同でMT-9を開発。2017年に打ち上げられた超低高度衛星技術試験機「つばめ」(Super Low Altitude Test Satellite:SLATS)に搭載され、その機能は実証済みだという。

 MT-9は1Nスラスタの第2世代機であり、従来機と比べて、トータルスループット(スラスターに供給される推薬の総量)とパルス数(スラスターの噴射回数)の双方が大きくなっており、国際的な競争力を有する長寿命が特徴という

 燃焼部分(ジェットモーター)と、そこに推薬を供給するバルブとの間の断熱性能が優れ、噴射モードで次の噴射までの開始時間に制約が無いと説明。ジェットモーターに取り付けられているヒーターの消費電力も小さいとしている。

 OHB Swedenは、30年以上にわたりスペースミッション、衛星、宇宙機などを提供している欧州の宇宙産業を牽引する企業という。同社によると、OHB Swedenからの受注は今回の契約で2回目としている。

1Nスラスタ(MT-9、出典:IHI)
1Nスラスタ(MT-9、出典:IHI)

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