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日本酒「獺祭」、宇宙で発酵–地球に持ち帰り、1億円で販売予定
2024.12.11 16:30
日本酒「獺祭(だっさい)」の蔵元である旭酒造(山口県岩国市)は12月11日、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」で酒造りに挑戦すると発表した。酒米「山田錦」やこうじ、酵母、水を打ち上げて宇宙で発酵させて地球に持ち帰る。
三菱重工業と愛知県のあいち産業科学技術総合センターが協力して、開発と打ち上げ準備を進めている。きぼうの活用は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の有償利用制度で7月に承認された。現在は、醸造装置の開発に取り組んでおり、2025年後半の打ち上げを目指している。
きぼうで発酵させた醪(もろみ)、約520gを冷凍状態で地球に持ち帰り、絞って清酒にした後で分析に必要な量を除いて、100mlをボトル1本にビン詰め。「獺祭MOON–宇宙醸造」として希望小売価格1億円での販売を予定している。出荷額は全額、日本の宇宙開発事業に寄付するとしている。
きぼうに設置されている「細胞培養装置追加実験エリア」(Cell Biology Experiment Facility-Left:CBEF-L)の人工重力発生機に醸造装置を設置して実験する。日本酒醸造特有の技術である並行複発酵現象を世界で初めて宇宙空間で確認する予定。
旭酒造は、2040年代に人類の月面移住が実現する場合、長期間を月で暮らす中で酒は生活に彩りを与える存在になると説明。水分を多く含むブドウと比べ穀物であるコメは軽いことから、月まで輸送しやすい特徴があるという。将来的にコメと月に存在すると考えられている水を使い、月面で獺祭を造りたいとし、その実現に向けた第一歩として、地球の約6分の1という月面の重力をきぼう内で再現した環境下で醸造試験を実施する。