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衝撃波を利用した「爆轟ロケット」、JAXAが世界初の打ち上げに成功
2024.11.14 15:02
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月14日、「液体推進剤回転デトネーションエンジンシステム飛行実証実験」を目的にした観測ロケット「S-520」34号機を打ち上げ、当初予想していた通りのフライトデータを得たことで実験の目的は成功したとの見方を明らかにした。
34号機は、衝撃波を伴う爆発である「爆轟」のエネルギーを、安全かつ効率的に推力に変換する「デトネーションエンジンシステム」(DES)を軌道上で実証することが目的。実験の詳細は、34号機に搭載されたデータ回収モジュール(RATS2)を回収して後でデータを分析して明らかになる。
実験を率いた名古屋大学 未来材料・システム研究所 教授の笠原次郎氏は、打ち上げ後の記者会見に登壇。データは速報値ベースと前置きしながら、打ち上げで得られたデータと地上での燃焼試験でのデータが、ほぼ同じ形となったことから「予想していた通り」として実験が成功したとの見方を明らかにした。
デトネーションエンジンは、従来のエンジンよりも簡単な構造で容易に推力を生成できる。そのため、ピストンやタービンなどの複雑な構造が不要となり、エンジン自体も大幅に小型軽量化できる。将来の航空宇宙領域を担う次世代エンジンとして期待されている。一方、爆発を制御する技術や、爆発時に発生する衝撃波に耐える素材が求められるなど、技術的な困難さも伴う。
JAXAは2021年7月に、回転デトネーションエンジン(Rotating Detonation Engine:RDE)が宇宙で実際に飛行することをS-520の31号機で実証してみせた。世界で初めてとなった。
31号機は燃料としてメタン、酸化剤として酸素という気体燃料で飛行した。今回の34号機では、燃料としてエタノール、酸化剤として液化亜酸化窒素(N2O)で飛行した。34号機では、液体燃料によるデトネーションで宇宙空間で飛行することを実証してみせた。
デトネーションエンジンは、海外でも注目を集めている技術であり、米航空宇宙局(NASA)でも研究開発が進められている。
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JAXAプレスリリース