小惑星が地球に接近--厳しいスケジュールの探査ミッション「ラムセス」が一歩前進

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小惑星「アポフィス」が地球に接近–厳しいスケジュールの探査ミッション「ラムセス」が一歩前進

2024.10.21 17:25

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 欧州宇宙機関(ESA)はイタリア時間10月17日、小惑星探査ミッション「RAMSES」(ラムセス)に関して、OHB Italiaと6300万ユーロ(約10億円)の契約を結んだことを発表した。イタリア・ミラノで開催された、75回目となる国際宇宙会議「International Astronautical Congress(IAC) 2024」で調印された。

 RAMSES(Rapid Apophis Mission for Space Safety)は、2029年4月に地球の静止軌道(約3万6000km)よりも近くを通過すると予測されている小惑星「Apophis」(アポフィス)を探査するミッション。直径350mと考えられているApophisを詳細に調査するとともに、地球に衝突しうる小惑星をどのように逸すかが検証される。

 Apophisのように、静止軌道より近く地球に接近する事態は極めてまれな現象として注目されている。RAMSESは、Apophisにランデブーして、小惑星が重力にどのようにゆがみ、変化するかを観測する。Apophisの組成や内部構造、質量、密度などに加えて、地球の重力に対する反応なども調査する。

 RAMSESがApophisに2029年2月にランデブーするためには、2028年4月に打ち上げる必要がある。こうした短い期間でミッションが打ち上げられるのは異例とされ、RAMSESのスケジュールはESAにとって厳しいものとして認識されている。

 OHB Italiaとの契約により、RAMSESはミッション開発の第1フェーズに進むことになる。ミッションはまだ完全に承認されておらず、ESA加盟国は2025年までに資金を全額拠出する必要がある。今回の調印で承認された場合にはミッションをすぐに開始することが可能になる。

 「これは我々にとって魅力的なミッションであるだけでなく、惑星および防衛活動の大きな節目でもある」と、ESAで宇宙安全プログラムを担当するHolger Krag氏は海外メディアのSpace.comに語っている。「我々の目標は、30m以上の物体について3週間前に警告を発し、500mまでの小惑星の軌道を逸らすことだ。Apophisは、まさにこれに相当する」

 RAMSESは、科学的な好奇心とともに小惑星の衝突からいかに地球を守ることができるのかという“惑星防衛(プラネタリーディフェンス)”という点でも注目されている。惑星防衛という目的では、米航空宇宙局(NASA)が主導した「DART」の対象となった小惑星「Didymos」(ディディモス)と「Dimorphos」(ディモルフォス)を探査するのが、先日打ち上げに成功したESAの「Hera」がある(RAMSESの探査機もHeraをベースにしている)。

 今回のApophisについてNASAは「OSIRIS-APEX」(以前は「OSIRIS-REx」)も探査ミッションを予定している。DARTとHeraは、惑星防衛を国際共同で進める「Asteroid Impact and Deflection Assessment(AIDA)」計画として進められている。RAMSESも惑星防衛の一環として進められる。

(出典:OHB Italia)
(出典:OHB Italia)

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ESAプレスリリース
Space.com

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