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近くの店に“宇宙発”の商品–新ブランド「JAXA LABEL」に込められた熱い思い

2022.08.18 08:00

林公代

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なぜ今、新しいブランドを立ち上げたのですか?

 「2008年にCOSMODEが始まってから10年以上経っています。2018年にJAXAでJ-SPARC(宇宙イノベーションパートナーシップ)が立ち上がり、民間企業とJAXAが共創して新しい宇宙関連事業の創出を目指す研究開発プログラムを実施しています。たとえば最近は、日用品や食品メーカーさんなどとJAXAの共創が増え、宇宙だけでなく地上での製品化が、より広がってきています。このタイミングでより波及力のある、存在感のあるブランドに育てていきたいというのが、最初の思いです」(吉原氏)

 JAXAと民間企業の共同研究と言えば、以前はテクノロジー関係の企業が多かった。例えば、「H-IIA」ロケット先端部のフェアリング用に開発した断熱材の技術から、住宅用の高性能塗布式断熱材「GAINA」(日進産業)が生まれ、COSMODEロゴがつけられている。COSMODE始動から10年以上が経った今、その流れを引き継ぎつつ、新たなブランドを改めて立ち上げることとなった。

(出典:JAXA)
(出典:JAXA)

 宇宙開発の流れが変わるきっかけの一つが、政府が2017年に発表した「宇宙産業ビジョン2030」だ。2030年代早期に国内の宇宙産業の市場規模を2.4兆円に倍増する目標が掲げられた。

 翌2018年にJAXAは民間事業者と共創で新しい事業創出を目指すJ-SPARCがスタート。これまで宇宙事業に関わったことのない企業とも新しい発想で多彩な共同研究を進めている。

 吉原氏が言うように、最近は宇宙旅行時代を見据え、衣食住関連の企業が宇宙に積極的に関わり始めている。

 JAXAは新たな商品の宇宙での実証機会を得ようと、宇宙と地上の課題を解決する新たな生活用品のアイデアを2020年に募集、集まった94件の中から国際宇宙ステーション(ISS)への搭載品9品を選定した。2022年秋以降にISSに滞在予定の宇宙飛行士である若田光一氏が実際に使用する予定だ。

 9品には、例えば、水がいらない洗髪シート「3D Space Shampoo Sheet」(花王)、飲める歯磨き粉「オーラルピース」(トライフ)、タブレット型ハミガキ&マウスウォッシュ「mouthpace(マウスペース)」(TSUYOMI)などがある。

(出典:JAXA)
(出典:JAXA)

 これらの商品は宇宙飛行士や宇宙旅行者が使うことはもちろん、地上の課題解決も目標に据えている。例えば、高齢者や身体の不自由な方に、あるいは災害時の避難所で。

 アイデア募集から地上・宇宙実証の一連の流れは、宇宙飛行士のミッションを支える有人宇宙技術部門と、暮らし・ヘルスケア分野のビジネス創出を目指す新事業促進部のJ-SPARC「THINK SPACE LIFE」プラットフォームがタッグを組んで行っており、今回選ばれた9品の中には企業や宇宙関係者らが参加するワークショップから生まれたアイデアもある。

 花王やライオン、スノーピーク、ワコールなど多くの生活に関連する企業が関わっていることから、これらの店やドラッグストアなどに今後、JAXA LABELの商品が並ぶ可能性も期待できるだろう。

JAXA LABELの3つのカテゴリ

 こうした変化を見据えて、宇宙発の商品を気軽に手に取ってもらい、世の中にもっと宇宙を広めるべく新しくJAXA LABELを立ち上げた。同時にCOSMODEの課題を解決した。

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