商用宇宙ステーション、日本関連市場は2000億円に--2035年まで15.2%成長

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商用宇宙ステーション、日本関連市場は2000億円に–2035年まで15.2%成長

2024.09.30 16:30

UchuBizスタッフ

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 「商用宇宙ステーション」の日本国内関連市場は2035年に約1975億円――。シード・プランニングが9月27日に発表した。

 1998年に建設が始まり、2011年7月に完成した国際宇宙ステーション(ISS)は、米航空宇宙局(NASA)や宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの多国間協力で運営されており、20年以上4000件以上の実験や商業活動の場として活用されてきた。

 地球低軌道(LEO)は、創薬やライフサイエンス、再生医療、革新的な新素材、宇宙での育種など「微小重力環境」、電子材料や宇宙用部品の耐久試験などの「宇宙曝露環境」、宇宙旅行やコマーシャルの撮影、アート制作、コンテンツスタジオなどの「エンターテインメント」の分野の場として有用と捉えられるようになっているという。

 だが、ISSは2030年末に運用が終了して、その後は民間企業が運用する商用宇宙ステーションがISSの役割を受け継ぐことが決まっている。シード・プランニングは、NASAやJAXAなどの宇宙機関が宇宙ステーションを「建設する立場」から「利用する立場」に移り変わると表現、「ポストISS時代」が到来しようとしていると説明する。

 現在では、「Starlab」「Orbital Reef」「Axiom Station」などの商用宇宙ステーションの研究開発が進んでおり、NASAはそうした商用宇宙ステーションの研究開発を支援している。

 こうした状況下からシード・プランニングは、LEO経済圏について、宇宙ステーション事業を巡る産業構造は大転換期を迎えていると表現。新産業の主導権を握るべく、開発競争や事業連携が活発化していると説明している。日本でも、ポストISS時代を見据えて、商用宇宙ステーション事業の一翼を担おうとして商社や宇宙スタートアップ企業がグローバルに出資したり事業開発したりといった動きがみられるようになっている。

 しかし、微小重力環境などのメリットを活用するのは、一部の科学や産業領域に限定されていると同社は説明。宇宙利用に対する理解が広まらない中で科学やほかの産業への波及効果を疑問視する見方もあるとしている。加えて、ロケットの打ち上げ費用はいまだに高額であることから、有望な事業領域を発見できない場合は、商用宇宙ステーションとして事業採算性を確保していくことは困難になる可能性もあるとしている。

 こうした背景を踏まえて同社は、現在運用中のISSを含めて商用宇宙ステーションの日本国内関連市場について「楽観的」シナリオと「悲観的」シナリオに沿って将来を予測。楽観的シナリオと悲観的シナリオのあいだの中間的シナリオに基づいた将来予測として、2024年は約418億円と推計、2035年には約1975億円に成長するとしている。

 2024年時点では、ISS関連のJAXA予算が大きな割合が占めているが、いずれは商用宇宙ステーションの有償利用が拡大するとともに宇宙旅行ビジネスが発展していくと予想。官需にも支えられながら、2024~2035年は年平均成長率(CAGR)は15.2%で推移する、高い成長が期待できる市場であると解説している。

 市場全体は順調に拡大していくと考えられる一方で、商用宇宙ステーションを利用することで得られる産業界の経済効果は、「商用宇宙ステーションの提供事業」と「商用宇宙ステーション向け物資輸送」の費用面と比較すると、2035年時点でも過小であることに注意が必要としている。商用宇宙ステーションの事業経営は当面、科学技術分野のための研究や実験を官需で行いながら、長期的な民間利用を促進することが必要になると考えられるとしている。

商用宇宙ステーション日本国内関連市場の将来予測(中間的シナリオ、2024~2035年、出典:シード・プランニング)
商用宇宙ステーション日本国内関連市場の将来予測(中間的シナリオ、2024~2035年、出典:シード・プランニング)

関連情報
シード・プランニングプレスリリース

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