モバイル通信の技術仕様に米イリジウムの要請が承認--圏外で衛星にSOSを通信

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モバイル通信の技術仕様に米イリジウムの要請が承認–圏外で衛星にSOSを通信

2024.09.27 08:00

塚本直樹田中好伸(編集部)

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 米Iridium Communications(イリジウム)は米国時間9月25日、業界標準のチップセットを搭載したスマートフォンから、地球低軌道(LEO)を周回する同社の衛星通信ネットワークに接続できるようになると発表した。

 Iridiumは運用中のLEO衛星群を通じて、携帯電話が圏外にあるときにテキストやSOSのメッセージを利用できる「Project Stardust」を2024年1月に発表。2024年初めには、研究室レベルでのデモンストレーションに成功したことを明らかにしている。

 同社は移動体通信事業者の業界団体であるGSM Associationに加盟しており、2025年初めにはProject Stardustを発展させた、衛星を活用する非地上系ネットワーク(Non-Terrestrial Network:NTN)サービス「Iridium NTN Direct」で追加の試験とデモンストレーションを予定している。

 3GやLTE、4G、5Gなどの移動体通信の技術仕様を作成するプロジェクトである3GPP(3rd Generation Partnership Project)は、技術仕様をまとめる「リリース19」でNTNを活用する狭い帯域でのIoT(Narrow Band IoT:IoT)の機能を拡張するIridiumの要請を承認した。

 これにより、業界標準のチップセットからIridium NTN Directにアクセスできるようになり、携帯電話の通信範囲外からのSOSやメッセージングサービスが利用できるようになる。

 Iridiumで最高経営責任者(CTO)を務めるMatt Desch氏は「携帯電話デバイスを持つすべての人に我々のグローバルライフラインサービスへのアクセスを拡大するというビジョンが、業界から幅広く支持されていることに感謝する」と述べている。3GPPのリリース19は、2025年第4四半期(10〜12月)に完了する予定だ。

 3GPPは、日本の電波産業会(Association of Radio Industries and Businesses:ARIB)など国や地域の標準規格を策定する標準化機関が参加するプロジェクト。3GPPで作成された技術仕様は、標準化機関によって国や地域の標準になる。国や地域の標準となった技術仕様は、国際電気通信連合(International Telecommunication Union:ITU)に提案され、国際標準になる。

 Verizonは衛星を利用した緊急通信と位置情報サービスを米国の一部でAndroidスマートフォン向けに今秋から提供することを8月に発表。スマートフォンによる衛星通信機能については、Appleの「iPhone 14」以降が緊急通信に対応。今秋提供する「iOS 18」では、通常のテキストや絵文字が送信できるようになる。

 Space Exploration Technologies(SpaceX)やAST SpaceMobile、Lynk Globalは、携帯電話会社の周波数帯を利用することで、すでに流通しているスマートフォンに届く衛星コンステレーションを開発している。

関連情報
Iridiumプレスリリース
SpaceNews

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