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「SLIM」運用終了–日本初の月着陸、想定以上の成果とJAXA

2024.08.26 16:59

小口貴宏(編集部)

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月26日、小型月着陸実証機(SLIM)の運用を8月23日22時40分(日本標準時)に終了したと発表した。5月から7月の運用機会において、SLIMとの通信を確立できなかったことから運用終了に至った。

 SLIMは2023年9月7日に種子島宇宙センターからH-IIAロケット47号機で打ち上げられ、2024年1月19日から20日に月面着陸を実施。着陸直前に推進機(スラスター)の片方が脱落し「逆立ち」姿勢となったが、日本初の月面軟着陸に成功した。

 月面に佇むその姿は、着陸直前に放出された子機「LEV-2」(SORA-Q)が撮影し、もう1つの子機「LEV-1」を通じて地球に送信した。

 なお、SLIMは、「降りやすいところ」ではなく「降りたいところ」に降りる世界初のピンポイント月着陸技術の実証を目的としていた。実際の着陸では、目標点からの誤差が10m以下という高精度を達成。これは世界初の成果となった。

 逆立ちで着陸したことで、太陽光パネルが機能しないトラブルが発生したものの、月面での西陽により発電を開始。マルチバンド分光カメラによって想定を超える10個の岩石を観測し、当初計画していなかった3度の越夜にも成功するなど、目標以上の成果を上げた。

 なお、SLIMのマルチバンド分光カメラは、月のマントルに由来するカンラン石の組成を分析し、その結果を地球のマントルと比較することで、月の起源を探る目的がある。

 月が形成された理由としては現在「ジャイアント・インパクト説」が有力視されている。同説は、約46億年前の原始地球に火星程度の原始惑星が衝突し、その際に飛び出た地球の一部が再結合して、現在の月になったという説だ。そこで、月のマントルに由来するカンラン石の組成を分析し、その結果を地球のマントルと比較することで、ジャイアント・インパクト説を検証するというわけだ。

 JAXAによると、SLIMの詳細な成果については今後総括し、別途報告するとしている。

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