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月面基地を無人建設するための技術開発、国交省が新たに3プロジェクトを決定

2022.08.12 15:30

佐藤信彦

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 国土交通省は、月面の施設を無人で建設するための技術を開発しようとしており、提案された候補技術のうち3件について、新たに実現可能性の検証を進めると発表した。

 これは「宇宙開発利用加速化戦略プログラム(スターダストプログラム)」の一環として開始した、「宇宙無人建設革新技術開発推進事業」にもとづく取り組みとなる。

米航空宇宙局(NASA)などによる月探査計画「Artemis(アルテミス)」を通じて月面環境に関するノウハウを持つ文部科学省とも連携し、月面拠点の無人建設に適用可能な技術の開発に取り組む。さらに、開発した技術は、各種災害にかかわる建設作業や、建築現場での人手不足などへの対策として、地上の事業へ波及させる計画だ。

全体的なスケジュール(出典:国交省など)

 新たに選んだ3つの技術研究開発プロジェクトは、いずれも1年度間かけて実現可能性を検証する。各プロジェクトの概要は以下のとおり。

(1)月面環境に適応するSLAM自動運転技術の開発(大成建設、パナソニックアドバンストテクノロジー)

 無人建設用の各種建設機械は、GPSなどの利用できない月面でも正確に位置情報を取得しなければならない。そこで、地形の特徴や、月面に設置したARマーカーから得た情報を組み合わせ、移動しながら地図を生成していく「Simultaneous Localization and Mapping(SLAM)」技術を開発する。そして、SLAMベースの自動運転技術の構築を目指す。

建設機械が自律走行する(出典:国交省など)

(2)トータル月面建設システムのモデル構築(有人宇宙システム)

 月の南極域で施設を建設することを想定して、各インフラ機器の設置場所、資源採掘や運搬に関する動線を検討し、月面建設システム全体のモデルを構築する。

(3)月の縦孔での滞在開始用ベースキャンプの最小形態と展開着床機構の開発(東京大学、九州大学、JAXA)

 月面活動の初期段階で拠点となるベースキャンプを、月の縦孔に設営するための技術「展開着床機構」を開発する。この施設は、長期滞在施設などを自動建設する際の拠点にも使う。

縦孔にベースキャンプを設置(出典:国交省など)

 なお、国交省の同事業では、これら3件のプロジェクトを含め、合計13件の研究開発を進めている。

合計13件の研究開発プロジェクト(出典:国交省など)

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