アストロスケール、運用終了の衛星を磁石で軌道離脱--Eutelsat OneWebと締結

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アストロスケール、運用終了の衛星を磁石で軌道離脱–Eutelsat OneWebと締結

2024.07.24 17:30

UchuBizスタッフ

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 アストロスケールホールディングスの英子会社は、運用が終了した複数の衛星を磁石で捕獲して軌道から除去する「ELSA-M」の契約をEutelsat OneWebと締結した。英宇宙庁(UKSA)と欧州宇宙機関(ESA)から1395万ユーロ(約23億円)を獲得した。アストロスケールホールディングスが7月22日に発表した。

 2026年に打ち上げ予定のELSA-M(End-of-Life Services by Astroscale-Multi client)は、運用が終了した衛星(End-of-Life)を除去することがメイン。除去対象衛星を捕獲したり除去したりできるインターフェースを搭載する。

 アストロスケール英法人Astroscaleが設計、製造しているELSA-Mは、アストロスケールが2021年に打ち上げた、デブリ除去技術実証衛星「ELSA-d」の機能を向上させたものになる

 ELSA-d(End-of-Life Services by Astroscale-demonstration)は、軌道から安全にデブリを除去するための捕獲機構を備えた捕獲機(サービサー)と、デブリ化した衛星を模した模擬デブリで構成。2022年5月に、模擬デブリへの誘導接近の実証に成功した。

 今回の契約はELSA-Mの軌道上実証の最終段階であるフェーズ4になる。フェーズ4では、実際に宇宙を航行するフライトモデルの組み立てと統合、打ち上げ、Eutelsat OneWebの運用が終了した衛星を捕獲後、軌道を離脱させる。

 UKSAとESAからの資金は、ESAとEutelsatグループの官民パートナーシップである「Sunriseパートナーシッププロジェクト」の一環として、Eutelsat OneWebと契約したことで拠出される。ESAの「電気通信システム先端研究(Advanced Research in Telecommunications Systems:ARTES)」プログラムの一部であるSunriseプロジェクトは、次世代の電気通信ミッションのシステムなどを開発することが目的。ARTESプログラムとSunriseプロジェクトはUKSAが支援している。

AstroscaleやEutelsat OneWebとESA(出典:アストロスケール)
AstroscaleやEutelsat OneWebとESA(出典:アストロスケール)

 2022年のELSA-dでは、約1700kmもあった捕獲機と模擬デブリの距離を160mにまで縮めることに成功。ELSA-dから確立しつつある「接近・近傍運用(Rendezvous and Proximity Operations:RPO)」はデブリ除去をはじめとする軌道上サービスに絶対不可欠な技術と位置付けられている。

 2024年2月に日本法人が打ち上げた商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」は、ELSA-dで培ったRPOを発展させたと言える。ADRAS-Jの対象デブリは、自らの位置情報などを発信しない「非協力物体」であり、絶対航法と相対航法を駆使して、約50mの距離にまで近づくことに成功し、対象デブリの周りを回って観測することにも成功している。

ELSA-Mイメージ(出典:アストロスケール動画)
ELSA-Mイメージ(出典:アストロスケール動画)

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アストロスケールプレスリリース
ELSA-M概要

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