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EY新日本、2024年3月期決算の監査に衛星データ活用–世界に点在する資産の現場視察を補完
2024.07.04 17:30
監査法人のEY新日本は建設や電力、金属といった企業の2024年3月期の会計監査で衛星データを活用している。7月4日に発表した。
監査での財務諸表の適正性を保証するには、クライアント企業の事業活動状況をタイムリーに把握する必要がある。EY新日本は、衛星データの取得フローや分析手法を確立して、クライアント企業が保有する、世界中に点在する資産などの現場視察の補完手続きや状況変化の確認に衛星データを活用している。Ridge-iから衛星データの知見を提供してもらうとともに技術的支援も受けている。
クライアント企業が保有する資産の現物確認や状況把握では、監査人が現場を視察する必要がある。海外や山地などの遠隔地、広範囲に点在している場合などでは、現地の往査や全体の状況把握が難しいケースがあるという。
資産の実在性や稼働を効率的、効果的に確認するためにEY新日本は光学衛星の画像データを利用するプロセスを構築し、利用を始めている。世界中の衛星データ会社が提供するデータの中から利用目的にあったものを選択し、監査業務に活用している。同じ場所で異なる時期に撮影した衛星データを比較することで、変化を自動的に検知する技術を利用して対象物の状況変化を把握することにも活用している。
EY新日本では、衛星データを監査に活用することで俯瞰的な視点から資産の実在性の確認、現場理解の補完、時系列分析が可能となり、監査品質の向上と効率化が期待できると説明。また、監査業務で得られたインサイトを提供することでクライアント企業のガバナンス強化にも活用できると説明する。
同社は、衛星データ分析で資産の自動検知や測定など、深層学習(ディープラーニング)などのAI(人工知能)技術も活用した監査業務へのユースケースを研究開発しているという。衛星コンステレーションが発展している中でビジネスでの状況把握からサステナビリティの領域など衛星データが活躍する場面は拡大していくだろうと予想する。
官民連携や宇宙スタートアップ企業の新規株式公開(IPO)支援に加えて、衛星データの監査業務やサステナビリティ領域への活用に向けて取り組んでいくと説明。得られた知見やユースケースを発信していくとともに衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)などの業界団体や宇宙関連企業と連携していくとしている。
EY新日本は2023年12月に「宇宙ビジネス支援オフィス」を設置。2024年4月にRidge-iの「衛星データ活用アドバイザリーサービス」の利用を開始した。
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EY新日本プレスリリース