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イプシロン6号機、10月7日に打ち上げ–「RAISE-3」とQPS研究所の小型SAR衛星
2022.08.09 07:30
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月8日、ロケット「イプシロン」6号機を10月7日午前9時47分頃~9時58分頃に打ち上げると発表した。打ち上げ場所は、内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県肝付町)。10月8~31日が予備期間として設定されている。
打ち上げられる「革新的衛星技術実証3号機」は当初、「小型実証衛星3号機(RApid Innovative payload demonstration SatellitE-3:RAISE-3)」のほかに超小型衛星3機、5機のキューブサットが予定されていた。
現行のイプシロンの後継である「イプシロンS」の打ち上げ事業者として選定されたIHIエアロスペースは、QPS研究所(福岡市中央区)が開発する小型の合成開口レーダー(SAR)衛星「QPS-SAR-3」「QPS-SAR-4」をイプシロン6号機への搭載を提案。4月に革新的衛星技術実証3号機の打ち上げスキームが変更された。
変更により、イプシロン6号機は革新的衛星技術実証3号機としてRAISE-3とキューブサット5機のほかにQPS-SAR-3とQPS-SAR-4が搭載される。QPS-SAR-3とQPS-SAR-4はIHIエアロスペースから委託されて、JAXAが有償で打ち上げるものとなる。
当初予定されていた超小型衛星3機は、IHIエアロスペースが調達する別のロケットで打ち上げられる。IHIエアロスペースが別のロケットで打ち上げる超小型衛星は、金沢大学の「KOYOH」、東京工業大学の「PETREL」、静岡大学の「STARS-X」の3機。
イプシロン6号機に搭載されるキューブサットは名古屋大学の「MAGNARO」、九州工業大学の「MITSUBA」、米子工業高等専門学校「KOSEN-2」、早稲田大学の「WASEDA-SAT-ZERO」、一般財団法人未来科学研究所の「FSI-SAT」となっている。
RAISE-3は、公募で選定された7つの部品やコンポーネント、サブシステムの実証テーマを軌道上で実証するための衛星となっており、実証テーマ提案者からの要求を受けて衛星を運用し、実証機器の実験データと実験実施時の環境データを提供する。
RAISE-3で搭載されるのは、日本電信電話(NTT)の低軌道衛星MIMO/IoT伝送装置「LEOMI」、NECスペーステクノロジーのソフトウェア受信機「SDRX」、三菱電機の民生GPU実証機「GEMINI」、Pale Blueの「KIR」、先端技術研究所の小型衛星用パルスプラズマによる推進装置(スラスター)「TMU-PPT」、アクセルスペースの膜面展開型デオービット機構「D-SAIL」、サカセ・アドテックの「HELIOS」。
NTTのLEOMIは、低軌道(LEO)衛星から地上への通信周波数利用効率を向上させられるという技術「MIMO」を評価するとともに、低消費電力で長距離の通信ができる無線通信技術「LPWA」方式に対応するIoTプラットフォームコンセプトの技術を評価するために軌道上で実証する。
NECスペーステクノロジーのSDRXは、設計に関するデジタルデータを関連する工程にも活用することで、高度で複雑な衛星システムを短期、低コストで開発する手法、軌道上でのオンボードを書き換え、動的に再構成する技術を実証する。
三菱電機のGEMINIは、民生用の画像処理に特化したプロセッサーであるGPUを軌道上で実証する。GPUに搭載するソフトウェア開発は、モデルベースと呼ばれる開発手法を活用して、開発期間の短縮や品質向上を目指すという。
Pale Blue(千葉県柏市)のKIRは、水を推進剤としたレジストジェットスラスターとイオンスラスターという2種類の1つのコンポーネントに統合した推進システムを軌道上で実証する。
先端技術研究所(東京都港区)のTMU-PPTは、超小型スラスターや超小型衛星のスラスターとして低電力、低価格化が可能な電気スラスターを軌道上で実証するとともに性能を評価する。
アクセルスペース(東京都中央区)のD-SAILは、運用終了後の衛星が軌道上に残存する期間を短縮するために「デオービット」と呼ばれる機構のシステムを検証する。
サカセ・アドテック(福井県坂井市)のHELIOSは、低コストな小型衛星の高性能化に向け、発電やアンテナの機能を搭載した膜構造物を軌道上で実証する。