三菱重工、AI物体検知機と宇宙用MPUを軌道上で試験--地上で再学習してモデルを刷新

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三菱重工、AI物体検知機と宇宙用MPUを軌道上で試験–地上で再学習してAIモデルをアップデート

2024.03.07 17:08

佐藤信彦

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 三菱重工業(三菱重工)は、宇宙用マイクロプロセッサー(MPU)「SOISOC4」で動かすAI物体検知機「Artificial Intelligence Retraining In Space(AIRIS)」を「革新的衛星技術実証4号機」に搭載し、軌道上でAIRISとSOISOC4を実証試験する。

 AIRISは、AI(人工知能)機能を備えるデータ処理装置と、東京理科大学の開発した地球観測カメラで構成するシステム。軌道から地球上の物体を撮影し、AIモデルによる画像処理で物体を検知する。軌道上でAIモデルが検知処理するため、地上へ送信するデータを目的の物体が写っている画像領域だけに絞れる。地上で再学習したAIモデルの結果を受信することで、軌道上のAIモデルをアップデートできる。

AIRISを構成する(左から)データ処理装置、地球観測カメラ(出典:三菱重工)
AIRISを構成する(左から)データ処理装置、地球観測カメラ(出典:三菱重工)

 三菱重工は、革新的衛星技術実証4号機として2025年度中に打ち上げられる予定の衛星「小型実証衛星4号機(RApid Innovative payload demonstration SatellitE-4:RAISE-4)」にAIRISを搭載し、試験する。地球上で航行している船舶を対象とし、以下に示す処理サイクルの確立を目指す。

  1. AIモデルが撮影画像から船舶を検知
  2. 船舶が写っている領域のみを選別して地上に送信
  3. 地上で再学習
  4. 再学習結果を軌道上のAIRISに送信し、AIモデルをアップデート
AIRISで実証する処理サイクル(出典:三菱重工)

 AIRISを動かすSOISOC4は、三菱重工と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発したMPU。宇宙空間の放射線に耐えられるという「Silicon On Insulator(SOI)」と呼ばれる半導体製造技術と、複数の機能を1つのチップに搭載する「System On Chip(SOC)」という設計技術をベースにした。深宇宙の過酷な放射線環境に耐える高い耐放射線性、多彩な通信機能、セキュリティ機能、低い消費電力での動作性能、といった長所があると説明する。

 JAXAの研究開発部門が進める「革新的衛星技術実証」プログラムは、超小型衛星などを活用した新規要素技術を実証、新規事業につながる技術を実証することが目的。大学や研究機関、民間企業が開発した部品や超小型衛星、キューブサットに宇宙で実証する機会を提供するプログラムであり、部品単位で軌道上実証できる機会としては唯一と説明している。

 開発された機器や部品をJAXAの人工衛星に搭載して打ち上げ、約1年間宇宙で運用して得られたデータは提案者に提供される。革新的衛星技術実証4号機はRAISE-4と8機のキューブサットで構成される。

革新的衛星技術実証4号機のミッションマーク(出典:JAXA)
革新的衛星技術実証4号機のミッションマーク(出典:JAXA)

関連情報
三菱重工プレスリリース
革新的衛星技術実証4号機の概要

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