ニコンのミラーレスカメラ「Z 9」、月に--有人探査ミッション「アルテミス3」

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ニコンのミラーレスカメラ「Z 9」、月に–有人探査ミッション「アルテミス3」

2024.03.04 15:37

飯塚直

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 ニコンの米子会社であるNikonは3月1日、米航空宇宙局(NASA)と「Space Act Agreements(スペース・アクト協定)」を締結したと発表した。

 NASAと協業して、ニコン製フルサイズミラーレスカメラが月の環境に耐えうることを確認し、ミッション中の写真と動画撮影のための効率的で最適なプラットフォームを開発することを目的としている。

 具体的には、有人月面探査「Artemis」計画で使用される「手持ち型ユニバーサル月面カメラ(Handheld Universal Lunar Camera:HULC)」の開発を支援する。対象となるのは「ニコン Z 9」(2021年12月発売)。

 月の環境は過酷な無重力空間であり、カメラを使用するには技術的・工学的な課題が多くあるという。例えば、月面温度はマイナス120度から75度まで大きく変化するほか、宇宙放射線が絶えず降り注ぐことで、すべての電気系統がダメージを受ける可能性があると指摘されている。

 そこで、NASAと密接に連携し、膨大な宇宙放射線に耐えられるように、カメラ内のさまざまな回路と制御シーケンスを再設計するなど、過酷な環境下で使用する際の信頼性を最大限に高めるソリューションを開発する。地球から約38万3000km離れた月でもカメラが動作可能な状態を維持できるよう、さまざまなテストやシミュレーションを実施し、熱真空試験のサポートも実施する。

 NASAでは、乗組員が宇宙服の分厚い手袋を着用していても快適かつ簡単に操作できるようにシャッターレリーズ、画像再生、静止画と動画のモード切り替えなどの操作性を備えたZ 9用のカスタムグリップを開発。カスタムグリップは、10ピンターミナル用ケーブルでZ 9と接続され、専用のカスタムファームウェアを活用して使用される。

 船外活動中にカメラ本体やレンズ、ハウジングを保護するため、現在、国際宇宙ステーション(ISS)で宇宙飛行士が船外活動中に使用しているものと同様の特別な熱保護カバーを製作しているという。

 カメラ本体だけでなく、NIKKOR Z レンズもミッションに使用されるため、使用される予定のレンズも月の過酷な環境に耐えられるように改良が加えられている。ファームウェアも特別にカスタマイズされ、再設計された電気回路に対応するとともに、乗組員や機材が常に浴びる宇宙放射線を考慮したノイズリダクションの適用範囲を高速シャッターにも拡張する対応などが含まれる。

 保護カバーに包まれた状態で最適化され、ファイル名の付与ルールや初期設定など操作性にかかわる部分も変更した。宇宙飛行士のワークフローを簡素化し、宇宙から地球に画像を送信する際の効率を高めるとともに消費電力を削減するため、カメラ内のFTP通信制御にも変更を加えている。シャッターシールドの最適化やHDR機能の強化、メニュー項目の初期設定の変更などが含まれるという。

 宇宙ミッションに適応できる改良を加えた Z 9は、長期的な科学観点での月面研究と探査の基盤を確立するため、有人月面着陸ミッション「Artemis III」で月で活動する乗組員に使用されることになる。

 Artemis IIIでは、2026年9月に宇宙船「Orion」を搭載したNASAのロケット「Space Launch System(SLS)」の打ち上げを予定。1972年以来、初めて人類が月面に着陸することになるほか、史上初めて女性宇宙飛行士が月面を歩くという歴史的なミッションを担っている。

 乗組員はOrionで月軌道に入った後、2人の宇宙飛行士が有人着陸システム(Human Landing System:HLS)で月面に降り立ち、約7日間をかけて月面でさまざまな調査を実施。調査の後、Orionに戻り、他の乗組員と合流して地球に帰還する。

 1971年の「Apollo 15」のミッション以来、同社製のカメラとレンズはNASAのさまざまなミッションやスペースシャトルでの宇宙探査で使用されており、1999年にフィルム一眼レフカメラ「ニコン F5」(1996年10月発売)とNIKKORレンズがISSで使用開始となった。

 以後、科学研究やメンテナンス、宇宙飛行士による地球や天空、さらにその先の象徴的な画像の撮影をサポートしてきた。最近では2024年1月に宇宙ミッション用に特別な改良を加えていないZ 9がISSに送られている

(出典:ニコン)
(出典:ニコン)

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ニコンプレスリリース

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